Melko

ロード・オブ・ドッグタウンのMelkoのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

”What are you girls waiting for?
My dad said we can trash it.”

ああ、泣いた泣いた…大好き!!堂々のベストムービー入りです。

ドッグボウルからのし上がり羽ばたいた、愛すべきスケボーバカたちの物語。
友情、成功、失敗、挫折、亀裂、嫉妬、そして和解と成長。
実話を元にして、実在の人物たちをぼほそのまま描いているから、結末は分かれども、熱い。滾る!!

サーフィンスケボー仲間のジェイ、トニー、ステイシー。
この3人の性格や生き方の違いがうまく描かれているのと、それを体現する役者の選び方が絶妙だった。
スケボー技術は荒削りだが、誰よりもスケボーを愛し、地元、友達、ママを大事にするジェイ。
誰よりもスケボー技術に秀で、自尊心たっぷりの目立ちたがり屋だが、負けん気が強くて根性があるトニー。
計算高いところもあるが堅実で真面目、スケボーの滑り方にもそれが現れる、冷静沈着なステイシー。
地元でバカやって悪さやってばかりだった3人が、スケートボードという、自分たちの全てを懸けられる物を通して、切磋琢磨し、反発し、壁にぶつかってゆく。

スケボー文化には詳しくないが、理屈抜きで五感を揺さぶられる、まるで自分が滑ってるかのような感覚になるスケボー走行シーンと、音楽が非常に良い!!個人的に大好きな70年代の音楽が溢れていたのも良かった。
冒頭、ジミヘンVoodoo Chileが流れる中での、3人がスケボー滑走しながら合流する早朝のシーン。シビれる!!
Foghatのイカす曲で車の後ろにつかまり走行、大会に向かうまでのHair of the dog, 大会シーンでのBlack sabbath…
特典のメイキングで知った、なんと主演3人含め役者は皆ホントにサーフィンもスケボーも猛特訓して撮影に挑んだそうで…!(驚)スタントダブルだろうと思って気楽に見てたら、ドッグボウル(空のプール)での走行やトリック決めのシーンはスタントなし…!
「なりきりたい」役者と妥協を許さないスパルタ女監督のスポ根撮影の結晶だった…!

個性の異なる自分たちを繋ぐ、大好きなスケボー。スポンサーがつき、賞金が絡むことで分かり合えず、バラバラになる3人。3人ともとても良い演技で個性を体現していたが、とりわけジェイ役のエミールハーシュが抜群だった。ジャンキーな母との貧しい暮らし。そんな母を捨てて去っていった彼氏に向ける、無言の怒りと蔑み。そいつにもらったサーフボードに、ナイフを突き刺してバキバキに折るところは、ああ思春期…て感じ。
お金儲けじゃなく、仲間と純粋にスケボーを楽しみたかったジェイが、失意の中大会を去る後ろ姿が泣ける。そして、その大会で敵意をむき出しにして戦うトニーとステイシーにもがっかりして、自分たちの青春の象徴だった長い髪をバリカンで剃る。青春は終わったんだ、といわれてる気がして、どうしようもなく泣いてしまった。どこでおかしくなったんだろう…

3人をバイトで雇ってたサーフショップ店長ヒースレジャーも良かった。大人だって完璧な人間はいない。特にヒース演じるスキップは大人として未熟で、自分がチームとして育てた彼ら3人を、金持ちスポンサーに引き抜かれ取られていくことに憤り、暴れ狂い壊れる。壊れた大人を冷ややかな目で見る少年たち…
そんなスキップと再会したジェイが、かつての遊び場だった、燃え尽きた桟橋で静かに涙するところもグッときた。もう昔のようにスケボーできないのか、俺たち…
でも、スキップだっていつまでも負けてない。生きるために、雇われ働きサーフボードを作る。ボリューム上げて歌い出すMaggie mayがイカす…
メイキングで嬉々として喋るヒースを見て、また泣けたよ…

そしておとぼけシド。彼がいたから、3人がまた集まれた。病気のせいでスケボーが上手くなかった彼からすれば、自由自在にスケボーを乗りこなせるのに、些細なことで喧嘩ばかりの3人を見て、「何やってんだまったく…」って感じだったのかな。
最初に書いたセリフはシドのもの。青春の象徴、ドッグボウルを前にして黙ったままの3人に、「boys」ではなく「girls」と呼びかける。「ナヨっとしてんなよ。お前らのドッグボウルだ、楽しめよ!」みたいな。
自分たちが青春して輝いてたドッグボウルに戻ってこれた。その場所を用意する粋なところ。彼の人生がドッグボウルの真ん中で輝いたことを祈る。

女性監督ならではか、男の友情とぶつかり合いを描きながら、緻密なスケボーシーンと徹底した時代考証、演者の衣装やヘアスタイル、当時を感じさせるセット。最後はほっこり、もしかしたら物足りない人もいるかもだけど、わたしにはちょうど良かった。帰ってきたドッグボウルを見つめる3人の表情が、たまらなく好きだ。
Melko

Melko