コマミー

セクシー・ビーストのコマミーのレビュー・感想・評価

セクシー・ビースト(2000年製作の映画)
4.3
【付き纏う不安】



今年のカンヌ映画祭でグランプリを受賞した、"ジョナサン・グレイザー"。

元々MV監督出身の彼だが、そんな彼が"初長編"として叩き出したのが本作だ。
主演は「ニル・バイ・マウス」や「ブラック・ウィドウ」などの名優"レイ・ウィンストン"で、共演に「ガンジー」などの名優"ベン・キングスレー"や「ジョン・ウィック」シリーズのウィンストン役でお馴染みの"イアン・マクシェーン"と言う様に、一気に3人の名優を従えたデビュー作となっている。

しかも本作は、物語の構成や演出も突発して優れている。"マフィアから足を洗った筈"の主人公がマフィアから差し出された"依頼請負人の男"が来訪してきて、"仕事を受けるか受けないか"の選択を迫られると言う構造の物語となっている。
観客の"不安を唆る"本作の全体的な構造と演出が痺れるほど好きだった。そしてレイ・ウィンストン演じる主人公の"繊細な表情"やベン・キングスレー演じる依頼請負人のじわじわと湧き上がる"イラつきからの爆発"を表現する演技が凄すぎて絶句した。

そして気になるのは、主人公の夢の中に登場する"ウサギの怪人"の存在。主人公にとって今まで、"捕獲される側にあったウサギ"の立場が逆転する…いわゆる"ツケ"と言う悪夢が忍び寄る事を暗示する様な存在であったと感じた。この使い方もまたジョナサンらしくて痺れた。

ほんとこれを今まで日本で見れなかったなんて勿体無いくらいヤバい映画だった。
まだ余韻が消えない。この人間の不安や怒りをクライムスリラーとして伝えながらも、ブラックなコメディとしても伝えてくる。

不思議で刺激的な体験だった…また観たいと感じたジョナサン・グレイザーのデビュー作だった。
コマミー

コマミー