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ゴー!ゴー!若大将のmのネタバレレビュー・内容・結末

ゴー!ゴー!若大将(1967年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

中期若大将の評価は難しい。

初期三部作を神髄と崇める本質主義者の立場からすれば、中期作品は皆邪道であると断じられるだろう。これは、シリーズのマンネリズム化を避けるための工夫の数々や、シリーズが東宝のドル箱コンテンツになり作品規模が拡大したことによる影響が大きい(電化若大将として高い知名度を誇る『エレキの若大将』は、何かが壊れた瞬間でもあるが、初期と中期が見事に調和されているのかもしれない)。

中期の作品は、主に古澤憲吾と岩内克己という二人の監督が手がけているが、両者の作風はまったく異なる。前者がコメディや笑いを志向しているのに対して、後者の作風はロマンティック、甘美なものになっている。

岩内克己のロマンティックな一面は、特に音楽シーンの演出において際立って現われている。本作では、序盤のダンスシーンが印象的である。若大将と澄ちゃんの会話から突然と始まるダンスシーンは、公園内の噴水が三原色のライトアップで彩られ、まるで夜の宴の始まりを告げるかのように美しく輝く。公園に集う男女たちは、甘美なトランペットの響きと共に登場し、今でいう『ラ・ラ・ランド』のようにロマンティックな雰囲気が広がるのだ。
(余談ではあるが、『レッツゴー!』の冒頭部では加山雄三と白木秀雄によるドラム合戦があった、チャゼルも若大将ファン)

僕自身は、完全に岩内派であり、古澤版若大将は僕の趣味にはあまり合わない。ただ、両者は若大将シリーズの視覚面におけるスタイリッシュ化を推し進めたことでは共通しており、その点では評価したい。

また、本作の撮影は素晴らしく、特に中盤のラリー大会は見応えがある。スピルバーグよりも先に『激突!』をやっているという革新性は置いておいて、車が駆け抜けた後に舞い上がる砂埃や、ロケ撮影を活かしたロングショットの美しさに惚れ惚れする。

小ネタとしては、シャウトする若大将。ノンポリ映画のはずが、学祭の場面でちらっとみえるベトナム反戦運動の立て看。
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