千年女優

鬼婆の千年女優のレビュー・感想・評価

鬼婆(1964年製作の映画)
4.5
戦乱で民が飢えに苦しむ南北朝時代。狩りだされた息子が戻ると信じて嫁と落ち武者相手の強盗で食い繋ぐが、戦から戻った八に息子の死を告げられた農民の女。隠れて八と逢瀬を繰り返す嫁に捨てられることを恐れる彼女が、奪った般若面で鬼に化けて脅して思いとどまらせようとするも嵐の夜に思わぬ事態に陥る様を描いたホラー映画です。

戦前から美術や脚本家として活躍して戦後には数多の作品に脚本として携わりながらデビューした監督業では芯の強い挑戦的な作品を残した新藤兼人が怪談を映画化した1964年公開の作品で、タブー扱いされていた女性の裸体を撮影する試みでインパクトを残し、日本だけでなく海外でも高い評価を受けて日本の怪談映画の代表作となりました。

素晴らしいロケーションと美術で当時の散々たる庶民の暮らしを演出し、荒々しい音楽とモノクロ映像で乙羽信子と吉村実子の怪演を盛り立てます。登場人物の少ない一本道のお話ながら主題の欲望や嫉妬、その帰結としてのエロスや暴力は移り行くどの時代にも通ずる厳然とした人の摂理であり、「古典」としての風格を感じさせる一作です。
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