このレビューはネタバレを含みます
原題: Le bonheur
英題: Happiness
オープニング…タイトルに似合わず、不穏な音楽とどこか悲しげなひまわりの映像。
建具屋の夫フランソワ、家で仕立てをする妻テレーズ、ピエロとジズーという可愛い2人の子ども。仕立てをしているだけあって、妻のワンピースがとても可愛い。ピクニックを楽しんだり、幸福な生活を送っている場面ではモーツァルトの、それを象徴するような長調の曲が流れます。この曲があまりに繰り返し流れるのでこの曲ありきで出来た映画かと思うほど。
幸せに恵まれた生活をしているフランソワなのに、郵便局で働くエミリーという女性に恋をし、関係を持ってしまいます。エミリーには今の自分の幸せな暮らしの話をし、エミリーもそれを受け入れフランソワが自分の家に来ることを許します。
いつものように一家でピクニックに出かけたある日、妻テレーズが最近特に幸せそうなのは何故かとフランソワに尋ねると、悪びれる様子もなくフランソワは愛人エミリーとの関係一部始終を話してしまいます。それは家庭崩壊を招くようなものではなく、新たに手に入れた幸せであると。子どもを寝かしつけ、行為のあと、フランソワは寝落ちしてしまい目覚めると妻がいない。子どもを連れ妻を森中探し回るとテレーズは溺死体で発見されます。
葬儀の後、しばらくの間を置いて復職したフランソワ。何事も無かったかのように、遺された一家はエミリーと暮らし始めます。
ラストシーン、夏が過ぎ、すっかり秋に模様替えした美しい森をピクニックで訪れる4人の姿。亡き妻テレーズの悲劇を知らない人が見たら、幸せな家族が秋のピクニックを楽しんでいると映るでしょう。ペアルックの黄色いセーターを着たフランソワとエミリー。子どもたちもお揃いの赤いセーターを着ています。亡くなったテレーズの手作りの服との対比でしょうか。どこか偽りの幸せのように見えてしまいます。そこに流れるのは冒頭のひまわりの映像のバックに流れていたモーツァルトの短調の胸を掻きむしられるような曲。彼らの未来を暗示するかのように感じられます。
フランスでは複数の人と関係を持つことは普通だとどこかで聞きました。傷つく側の人間は必ずいると思うのですが、そういうものだと割り切れるもの?フランス人の友人に詳細を聞いてみたいものです。
モーツァルトの2曲ですが…。
幸せを象徴するような楽しげな長調の曲は『クラリネット五重奏曲 イ長編 K.581』
https://youtu.be/xTNbclgU3h4
オープニングとエンディングの短調の曲は
『アダージョとフーガ ハ短調 K.546』
https://youtu.be/jSZJjTeP0mU
ご参考まで。