Masato

幸福(しあわせ)のMasatoのレビュー・感想・評価

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)
3.5

町山さんが怖い映画と言っていたので鑑賞してみた。

ある意味衝撃のオチ。恐ろしいものを恐ろしいものとして描かないこのむず痒さがゾワッとする。何も変わらないのが恐ろしい。

今見ると、これが当時のフランスの貞操観念?って思ったけど、そうじゃないから評価されているんだよね。この年代のフランス映画を見てないから、何が当然でそうじゃないかが分からなくて勉強不足を感じた。女性監督だから、自分の自己満足のツールでしか人を愛せない男性の愚かさを描いたのかな?と思った。もはや愛なんてそんなものなんだとも言うかのような。

最初はめちゃくちゃ良い人だと思っていたものが、段々と疑わしい方向へとズレていく。嘘をつかないところも感情の切り替えが早いところも、良い面にも悪い面にも捉えられて、どちらの面にしても共通しているのが非人間的であるということ。

善き人とはどう定義するのか。「こいつ人間じゃない!」という感覚をサイコパススリラーなど邪悪に描くことで表現するのは簡単だが、邪悪に描かないで純真であることで表現することの凄まじさは稀有。だからこそ、「怖かった」ではなく「なんかゾワゾワする」を体感できる素晴らしさ。所謂"人間味"があることの素晴らしさを噛みしめる。

また、幸福は誰にとっての幸福なのか…。文字通りの場合もあれば皮肉とも捉えられるものもある…。
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