あんじょーら

幸福(しあわせ)のあんじょーらのネタバレレビュー・内容・結末

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

オープニングから凄まじく不安感を誘うひまわりの映像なのですが、日に向かうきれいなひまわりと、下を向いてしなびかかったひまわりの2つを交互に細かくやたらとカットするのが印象的でした。音楽もとても軽やかな明るい感じのテンポで聴いたことある曲なのですが、とても寒々しく明るく聞こえてきません。

大工を親戚と一緒に仕事にしている男は美しい妻(洋裁の仕事もこなす)と2人の子供と暮らしています。休日には近くの森に家族で出かける遠くから見ればまさに絵に描いたような平和で「幸福」な一家です。そこにある変化の兆しが...。







ネタバレありです!!!未見の方でこれから見たいと思っている方、これから見るかもという方はご遠慮ください。











結局オトコは他に好きなオンナが出来るのですが(より勝手な私のオトコ目線で言えば、『簡単に引っかかってくれそうな、それでいて美人で、自分に気があるのが』分かった瞬間口説き始める)それを妻に黙っているのが自分の良心にとって(そんなものがあるのが、通俗的でまた分かる)キツくなったので(最初から妻に打ち明けているならまだしも)断りようの無い雰囲気で打ち明けます、「他に好きなオンナがいる、でも妻も愛してる、相手もわかってくれている、だからこのままでいさせてくれ」と。さらに妻が受け入れる(というかうつろな目で受け入れざる得ない状態のように見える)とそのままことに及ぶという(この告白の場面のなんとリアルなことか!必見です、とんでもなく気持ち悪い)自分中心の凄さ。フランスで1965年の作品でこれはスゴイのではないか?あるいはあの個人主義と言われるフランスでも1965年だとこういう事なのか、ともとれます。



妻は事に及んだ後に寝ているオトコを置いて入水自殺。他に方法がなかったのか?と思うと疑問も残るのですが(子供を連れて家を出るだの、オトコの主張を受け入れたくないとの拒否の意見を述べるだの、)それが出来ないくらい不意を打ち、しかもオトコを信用し、愛していた、と充分思わせる演技なのです。



で、ここからもまたスゴイのですが、オトコは浮気相手に「妻にならないか?」とこれまたしれっとつぶやく。んでその発言に乗るオンナ。最後には冒頭の近くの森に家族で出かける「幸福」な一家(妻が変わってはいるが)となって手を取り合って森の中へ...。




様々な解釈があって良いし、そこを楽しむべき作品なんでしょうけれど、女性の監督の目の鋭さは確かに感じられました。カット割りがすさまじく上手くて、不安な気分を盛り上げますし、店名や看板なんかにセリフを書き込む斬新な手法なんかも素晴らしかったですし、同じ音楽を聴いていても、そのとき聞き手の気分によって随分違って感じるのだと実感出来ます。



斬新な、そして綺麗な映像にのせてショッキングな映画が見たい人にオススメ致します。