S・S・ヴァン・ダインなる米推理小説作家の作品の映画化で、ホームズやポワロシリーズと同じく、名探偵が事件を解決するという展開。
探偵自身は『Pholo Vance』という、『プロヴァンス』に引っ掛けたような名称の持ち主であった。
30年代のクラシックでもギャング映画の雰囲気は皆無、また40年代のノワール群が有した闇も、一切感じられない様式美の世界。
私生活では日記を付けるのが好きな(笑)メアリー・アスターが、劇中で落とした口紅にまつわる伏線の回収の仕方は、意外なほどの変化球。
また彼女が演じる、お世辞にも好感度が高いとは言いにくいキャラが「最も得をする」という結末は、何だか微妙。
さらに事件当夜の真犯人の行動が複雑で、推理で解決を見るという展開はやや強引だった。
密室状況を実現する『鍵のトリック』は、丁寧に撮影されている。
またわざわざ模型を使用して、建物の位置関係を紹介する場面には、努力が感じられた。