たか

桜田門外ノ変のたかのレビュー・感想・評価

桜田門外ノ変(2010年製作の映画)
5.0
 全く見事な作品でした。
 最初の方に井伊直弼が殺されてしまったので、どんな展開になるのかと思っていたら、回送シーンを交えながら、その後の桜田十八士について描かれていました。最後に山を持って来るのも良いのですが、こういう構成も面白みがあります。
 桜田門外のセットは水戸に造られたそうですが、映像がきれいでした。降り積もる雪と鮮血のコントラストもまた、何か生々しさを増強していますね。
 桜田十八士なんて一人も名前を言えなかったし、彼らのその後なんて、今まで考えた事もなかったです。実は赤穂浪士みたいに、こうやって映画にできるくらいドラマチックだったのですね。
 幕末で行動を起こすのは、やっぱり下級武士が多いです。水戸藩士・関鉄之介、私とほぼ同い歳で亡くなっています(斬首)。志の美談の中に出てくる愛人・いの、愛人がいる疾しさが全く表現されてないのは、そういう時代だったのでしょうかね?
 そして幕末の志士達の『志の高さ』には、いつも良い影響を受けています。
 映画『十三人の刺客』もそうだったのですが、お互いに志があって、そのどちらも間違っている訳じゃない、つまり『善と悪』じゃないと言う描写、作品のクオリティを上げますね。
 大河ドラマ『徳川慶喜』『新選組!』『龍馬伝』などは、確かに面白いのですが、どこか『善と悪』的に描いてしまっていて、それ故に所詮テレビドラマ...と思ってしまう面が、正直少々あったりします。
 井伊直弼も桜田十八士も、私利私欲ではなく、国の未来に対する志を抱いています。本気で国の行く末を憂い、自分なりの考えで、命をかけて最善を尽くそうとしていたのだと思います。今の政治家にそれを感じないのは、私利私欲の要素が高いのか、はたまた平和になったからなのかは、わかりません。
 「直弼一人の命を奪うため、なんと多くの命が犠牲になった事だろうか...」と言う感じのセリフが印象に残っています。
 皮肉にも、御三家である水戸藩が、倒幕のきっかけを作ってしまった訳ですね。そして西郷隆盛の人生を改めて考えてみた所、これほど立場が変わった人ってそう多くはないなと感じました。
 最後に、切腹の潔さもわからないではありませんが、時が流れ、時代が変われば、国にとって必要な人物になっているかもしれません。国の行く末を考えるなら、自己中心的な切腹などせずに、耐え忍んで生き延びようとする『したたかさ』が必要だと強く思うのが私だけでしょうか?
 そういう意味で、仙台藩士・細谷十太夫なんかは、そういう要素を持っていたんだな...と感じます。
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