桃子

80日間世界一周の桃子のレビュー・感想・評価

80日間世界一周(1956年製作の映画)
4.2
「最初のカメオ出演映画」

映画本編より、映画音楽の方がずっと世に知れ渡っているという作品がある。ちょっと思いつくだけでも「いそしぎ」「男と女」「シャレード」「シェルブールの雨傘」「第三の男」「ひまわり」「シャルウィダンス」等々。ここにリストアップした映画は、全部見たことがある映画である。「いそしぎ」で思い出したのだが、以前にうちのジャズバンドでライブに参加した時、メンバーが「いそしぎ」を歌った。MC担当のメンバーが「これは『いそしぎ』という映画の主題歌なんです。映画を見たことがある方、いますか?」と質問した。会場で手を挙げたのは私だけだった記憶がある。曲は誰でも知っているけれど、映画まで見る人はなかなかいないというのが実情だろう。
この「八十日間世界一周」もそういう映画の最たるものだと思う。ゆったりとした三拍子の優雅でノスタルジックなメロディは、たとえ映画を見たことがなくても世界一周旅行の情景が目に浮かんでくるようなインパクトを持っている。旅行の方法として「気球」が印象的だが、気球に乗るのは最初の行程だけで、あとは船とか列車である。映画のポスターに気球が描かれているので、気球で世界一周するのかと思う人もいるかもしれない。ポスターの威力は絶大だ。
長尺な映画である。2時間49分もある。「風と共に去りぬ」と同様、途中でインターバルがあった(DVDは2枚組になっていた)。長いのだけれど、見ていると面白くて全く退屈しなかった。映画を見ながら、本当に自分も世界旅行をしているような気分になれる。
日本もちゃんと出てくる。横浜に寄港したのに、なぜか唐突に鎌倉の大仏様が登場する。エキストラで出てくる日本人の姿もなんだか変なのだけれど、御愛嬌ということでつっこむのはやめにしておく。
この映画の最大のネタは、やはり「カメオ出演」だろう。大物俳優がちらっと登場する。今ではごく普通にあることだが、カメオ出演を最初に取り入れたのがこの映画だということだ。誰が出ていたかというと、ジョン・ギールグッド、シャルル・ボワイエ、ロナルド・コールマン、チャールズ・コバーン、ピーター・ローレ、マレーネ・ディートリヒ、ジョージ・ラフト、フランク・シナトラ、バスター・キートン、ジョー・E・ブラウン、ヴィクター・マクラグレン、ジョン・ミルズの面々である。私はボワイエとローレとディートリヒとシナトラとキートンしか知らなかった(^_^;) マレーネ様は、サンフランシスコの酒場のホステスとして、ほんとにちらっとだけ登場する。シナトラはこの酒場のピアノ弾きだ。なんとも豪華な顔ぶれで、これだけでも見る価値があると思う。
原作はジュール・ヴェルヌの同名小説である。むろん原作を読んだことはないのだが、wikiであらすじを見ると、映画がほぼ原作通りに作られていることがわかる。フィリアス・フォッグを演じているデヴィッド・ニーヴンとパスパルトゥを演じているカンティンフラスが、おそらく原作のイメージ通りなのだろうと想像がついた。とにかくパスパルトゥが最高に面白い!こんな執事と一緒に旅行をしたら、さぞかし楽しいだろう。
以前から、ちゃんと見たいと思っていた映画だった。動画配信にはないので後回しになっていたが、バンドのメンバーのひとりが面白いから是非見て欲しいと言ったことが後押ししてくれた。宅配レンタルDVDだと、少し手間がかかるが、たいてい見たい映画は鑑賞できる。バンドメンバーに感謝!宅配レンタルに感謝!である。
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