ジミーT

ダイナマイトどんどんのジミーTのレビュー・感想・評価

ダイナマイトどんどん(1978年製作の映画)
5.0
最初にこの映画を観た時、えもいわれぬ懐かしさを感じました。この映画の舞台は昭和25年。私は生まれていません。だから時代に対する郷愁ではない。何故、えもいわれぬ懐かしさなのか。それはこういうことだと思います。
どうか、俺の話を聞いて下さい。5分だけでもいい。

「野球に命を懸ける」これは私の生きている世界でも起こりうることです。野球選手とか。しかしこの映画の人たちは「野球で命を賭ける」。これはこの映画に出てくるようなアウトローな人たちにしかできないでしょう。

一方、この映画を観る私はアウトローではないカタギの人であり、陽のあたる道を歩かせて頂いております。これを仮に「A級映画な人」と呼ぶことにします(注)。
一方、この映画に出てくるアウトローな人たちをカタギの人たちに対して仮に「B級映画な人」と呼ぶことにします。
つまり「野球で命を賭ける」というのは「B級映画な人」にしかできないことなんです。しかしそれが何故、えもいわれぬ懐かしさだったのか。私はアウトローだったことはないのに。

それはこういうことだと思います。
実はアウトローな人たちでなくても、カタギの人たちの中にも「B級映画な人」が存在する。
それは子供たちです。
「A級映画な人」=「大人」に対して、子供は「B級映画な人」。
だから子供の世界では「野球で命を賭ける」ということがあってもおかしくない。

つまりは自分も一度は「B級映画な人」だったんです。それがいつしか「A級映画な人」になったんですね。
私はこの映画のアウトローを通して、「B級映画な人」=「子供」だった自分に触れていたんだと思います。だからこその、えもいわれぬ懐かしさ。
直接に子供たちの騒ぎを観るのとは異なり、「B級映画な人」というワン・クッションを通すことによる懐かしさ。

だからもう楽しい楽しい懐かしい!
選手をスカウトしてくるときのおかしな仁義、岸田森のピンクのファッション、呑兵衛投手のヘンテコな魔球、ついでに殴り込み、仕込み杖式バット、「ニンキョー!」しかいわない大親分、花札の背番号、傷痍軍人のバンカラ監督。「A級映画な人」にはできません。試合前日の集合写真のシーンで私は泣きました(笑)。
クライマックスはやっぱりというような泥試合、捕まってもまだ続けてる。
90分か100分の素材だけど、143分もある。長すぎと言われそうだけど、かまうもんか。楽しいんだから。もっと遊んでいたい。
こんなにも楽しく懐かしい映画は他にない。季節は夏。「B級映画な人たち」の夏休み。夏の終わりに思い出し、レビューいたしました。長くてすんません。


A級映画という言葉はないと思いますが、便宜上勝手に作りました。
ジミーT

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