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フォレスト・ガンプ/一期一会のrensaurusのレビュー・感想・評価

4.3
知能指数が高くないからこそ、愚直に考え、短絡的に数多く行動することができ、持ち前の集中力、走力、定型動作の実行力を最大限に発揮できるフォレスト・ガンプ。

何の作為も思想も伴わない『今=自分』に根差した生き方は、ある意味で最も賢く思想的に映り、劇中に意識的に登場する政治情勢、時代性、大衆娯楽が滑稽にすら映る。ただその生き方に何の作為もないというのがフォレスト・ガンプの真髄であり、聖人愚者たる聖域になっている。

ただ走っているだけなのに感動を与えるが、本人もただ走っているだけなのである。

フォレスト・ガンプの考え方には、『社会性』というものが存在していない。全てがフラットで等しく価値がある。ジェニーがストリップで歌っていても感動するし、ダン中尉のことも友達だと思っている。そのどこまでも中立的な眼差しが、絶望したダン中尉に光を差し、ジェニーの最後の綱になる。

彼を動かす明確な軸は、道徳心である。体を売ってまで真摯に育ててくれた母親。隣に座ることを赦してくれたジェニー、ババ。ありのままで接してくれたダン中尉。恩返しと機会に重きを置いた生き方はまさに『一期一会』であり、見るも美しい。シンプルで力強い。

「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみるまで分からない。」と言われていたフォレストがダン中尉と出会い、「人生には予め定められた運命がある」という言葉を知る。無理に選ばず、そのどちらでもあることを噛み締める。ただ、それを凌駕するのはジェニーを失って寂しいという純粋で強力な感情だった。フォレスト・ガンプが唯一執着したジェニー。執着が一切ないフォレストだからこそ、唯一の執着である恋慕の情が輝いていた。
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