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フォレスト・ガンプ/一期一会の3110133のレビュー・感想・評価

1.4
芸術の修辞という側面の、もっともいやらしい使用法

70〜80年代の産業的衰退、それに加えてベトナム戦争の泥沼化、反戦ヒッピー文化の廃退、差別や児童虐待、夢を実現することがおとぎ話でしかなくなっていく。
そんなぼろぼろで救いがない状態のUSAを慰める手段としてのこの映画。
純粋無垢で、天使のようなフォレスト・ガンプが歴史的出来事を渡り歩きながら、完全にぶっ飛んだミラクルで、懐メロと共に当時のアメリカで生きた人を癒していく。
きっと、当事者は高揚感を感じるのだろうかと推測するが、どうなんだろう。

公開当時、無知でただ映画好きな少年だったわたしは、映画館にいそいそと観に行った記憶がある。
コミカルだし、感情移入は計算されているし、道徳的善なんかもあって、わたしは「感動」したのだった。

いまあらためてみると、胸糞が悪い。
フォレストは天使なんかじゃなく、人工的に作られた模造品。純粋無垢なフリをした厚い面の下からは、いやらしさが透けて見える。オープニングとエンディングにこれみよがしに登場する天使の羽毛のぎこちなさとわざとらしさがこの映画の魂そのもの。
邪悪。

深く考えず、過去を捨てて全力で前に走るってすごく危険じゃないだろうか。
人生は箱に入ったチョコレートのようって、いっけん耳障りは良さげだけれども、
考えようによっては自らの生を何かに託すという、それを運命といえば聞こえは良いかもしれないが、
実際には権力者や為政者に都合がいいだけの者に成り下がるだけじゃないのか。

芸術の修辞という側面の、もっともいやらしい使い方の代表的な作品。
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