むっしゅたいやき

リラの門のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

リラの門(1957年製作の映画)
4.0
『巴里祭』で著名なフランス詩的レアリズムの巨匠、ルネ・クレール監督作品。
風刺と諧謔、そして詩情に富んだ豊かな作品です。

物語の舞台はパリの下町。
そこで起こる或る出来事を中心に、その一画に住む個性豊かな人々を活き活きと描きます。
描写はとてもコメディタッチでありながら当時の社会への諷刺も多く見られ、軽妙洒脱にテンポ良く進むことからストレス無く観られました。

お人好しの呑兵衛ジュジュを演じるのは、名作『天井桟敷の人々』の名優ピエール・ブラッスール。
風貌からも適役でありますが…、若い頃の彦摩呂にしか見えないのは私だけでしょうか。
兎に角、この彦摩呂もといジュジュが甲斐甲斐しく殺人犯を世話するのですが、その様が微笑ましい。
彦摩呂が小走りし、彦摩呂が慌て焦る…。
そしてこの利己的な性格から利他的な面も見せる様に成長するジュジュと、一貫して自己中心的なピエロとの対比が見事です。

また、横移動のみとなり勝ちなカメラに関しても、縦への目線誘導となる地下室への昇降やシャワーを採り入れており、舞台の狭さを感じさせない工夫が見られました。

変革を起こして行く人物と、変わらない人物との交友、ひと時の交錯を描いた作品では有りますが、その哀愁漂うラストも踏まえ、変わり行く人々と云う意味でもお勧めしたい彦摩呂です。
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