たく

リラの門のたくのレビュー・感想・評価

リラの門(1957年製作の映画)
3.8
もう30年くらい前に観たルネ・クレールの名作を再鑑賞。冒頭の酒場で弾き語りしてる芸術家の味のある歌をなんとなく覚えてたくらいで、新鮮に観られた。

酒浸りのジュジュと彼の親友の芸術家が、ひょんなことから殺人犯のバルビエをかくまうことになり、なんとか彼の逃走劇を手伝おうとする話。最初ろくでなしにしか見えなかったジュジュが、限りなくお人好しで人間味を見せるところが愛おしくてジーンと来た。
ジュジュのあまりのお人好しっぷりに芸術家があきれてるんだけど、彼を見捨てないところがまたいいんだよね。ここにジュジュが密かに思いを寄せるマリアが絡んできて、途中で二人がいい感じになりそうなところからの彼のうっかり行為が自業自得となるあたりが人生の皮肉を描いてて上手い。

最後にジュジュが覚悟を決めるところがグっときて、無邪気さと引き換えに一歩大人にならざるを得ないところに余韻が残る。バルビエの事件の経緯を語る新聞記事を読むシーンで、窓の外の子どもたちの犯人ごっこに記事の内容を重ね合わせる演出がすごかった。
ルネ・クレールはこないだ観直した「巴里祭」が良かったし、「沈黙は金」ももう一度観たい。
たく

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