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リラの門のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

リラの門(1957年製作の映画)
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私は善人でないし情に厚くないのでジュジュに肩入れできず、ジュジュの友人の芸術家も薄情といわれながらも、殺人犯に地下室を貸し、名義も貸していた。このラストに、ええーここで終わっちゃうの?と声を出したほどカタルシスのない名作。ジュジュよい人だけど、ダメじゃん、それはダメ、それもダメ、心の中でダメ出ししながら観ていた。かわいそうな結果や迷惑被ることになるのはありありだったから。

でも、現実にはあり得そう。自称も他称もろくでなしと言われているジュジュ、貧しくて年老いた母は働いている。ジュジュは飲んだくれ。流しのギター弾きの芸術家だけがジョジョと対等に話してくれる。

きっとこの名作と呼ばれている作品にはもっと愛あるレビューが多いのだろう。ジュジュを本当に愛するなら、「社会的な分別」や「普遍的な倫理観」という、ジュジュの世界を広げる視点で、誰か、それはお母さんかお姉さんが話さないとならないんだろうな。「情けは人のためならず」の誤用の方の意味が近い。

「幸福なラザロ」を思い出した。目の前で困っている人がいたら、社会的な文脈で善悪を講じず、まずは助けることが第一。それって根本的な善悪がついていないからなんじゃ、と思ったが、<善行>とは、たとえ相手が悪党でも喉が渇いていれば水を分ける、社会の文脈と切り離して為す人道的な行為。ジュジュがしたことは一貫している。困っているから助ける。そして友だちになりたい。社会からの視点はない。極私的関係の中だけにいる。

時に、人が善すぎる人を愚かともいうが、ジュジュが間違っていなかったことは、マリアの気持ちを大切にしていたこと。無償の愛であった。
教訓なのか。切なかった。

スコアつけられなかったです。
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