ちろる

リラの門のちろるのレビュー・感想・評価

リラの門(1957年製作の映画)
4.1
ルネ クレール作品4Kリマスター版@恵比寿ガーデンシネマ
地味だけど、後から切なさがじわじわとこみ上げてくる作品。
盗みはするし、大酒飲みだし、ロクなもんじゃないジュジュに最初から叱咤したくなるほどやれやれなんだけど、物語が進んでいく上で彼が最初に口ずさんだように本当に純粋なのは彼なのではないかと思えてくる。
そして酒の匂いがプンプンしそうな汚いおじさん2人や銃を持った逃亡犯が出てくるお話なのに、まるで絵本を読んでいるような気分にさせられるほのぼの感が拭いきれないのはジュジュの無垢さとピエールのお人好しさが度を過ぎてるからなのかも。
ちなみにこのジュジュに関しては日本人愛する「車寅次郎」にちょっと被るから愛おしいんだという事に気がつく。
そんなピエールとジュジュの凸凹コンビのやり取りがはじまりのフォアグラシーンから微笑ましくてこの素っ頓狂な感じに笑ってしまう完全なるコメディなはずだったのにみているこちらが虚無感に襲われてしまうラストシーンに呆然。
FINが描かれたこの後に描かれていないラストシーンを思うとなんとも切ない。
純粋さが仇になってしまう。
これはどの時代もどの国でも共通なのかもしれませんが、ピエールとジュジュのささやかで穏やかな友情だけはどうか永遠にと祈るばかりです。
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