Jeffrey

リラの門のJeffreyのレビュー・感想・評価

リラの門(1957年製作の映画)
3.5
‪ ‪ ‪ ‪「リラの門」‬

‪冒頭、パリ北東部、霧かかる町。酒場で酔っ払う親父。弾語りの声、缶詰の万引、警察の家宅捜査。警官殺しの犯人、銃声、スーツケース、女の部屋、地下生活…本作はR.クレールが製作、監督、脚色、台詞を務めたR.ファレ原作の大環状線を映画化した彼の後期の名作で主演を務めたP.ブラ‬ッスールが凄く良い芝居をしてくれた。物語は近所に警官殺しが逃げ込み、呑んだくれジョシュの友人で芸術家と称される男の家で彼を匿う事になる…そこから展開される話は思いもしないラストを迎える。なんて面白いストーリーなんだろう。だって中年のおっさんが殺人犯を友人の家の地下室で世話をし始め‬るんだから…ビックリだよ。また主人公の呑んだくれのダメ男なんだが、酒場の呑み仲間、近所の子供から愛されるお人好し感が堪らなく良いんだ。言わば三角関係を秋から冬の期間で描き全体的に黯然で初期作と比べるとかなり印象が変わる…無論、微笑ましい子供の戯れは本作で観られる。然し乍らやはり、‬どこか寂しさを感じてしまう…淡々と進む作品は寧ろ好きな方だ。だがクレールの30年代のあの光輝で音楽を第二の脚本にしたかの様な演出や構成が無い…なんとも寂しい。だが後にシャンソン界の大御所になるJ.ブラッサンスの歌が唯一の救い…悲しいが。本作はヴェネチア国際映画祭に出品された様だが、当‬ ‪時の審査員長がクレール自身だった為にコンペは見送られたと言う。一応アカデミー賞にはノミネートされたが。賛否が分かれた本作だが、あのまさかの帰結に僕はこの映画のファンになったよ。巴里祭の様なハッピーエンドでもなく…何だろうなこの気持ち…クレール好きが観ると心が満ち足りずもの寂しい。‬
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