「みんな自分のことしか考えない。それで精一杯なんだ。」
酒飲みのジュジュとその友人の音楽家。
ある日、家に押し入った殺人犯ピエール・バルビエを匿うことになる。
うなされるピエールに薬を飲ませるジュジュ。
子守唄のようにギターを奏でる音楽家。
二人は警察の目をすり抜けながら、ピエールとともに生活していく・・・。
逃亡した犯人の話題で持ち切りの酒場。
カメラはゆっくりと、窓から見える子どもたちにクローズアップする。
「警察は犯人に罠を仕掛けた。ところが二人の警官が撃たれて死亡。犯人は車で逃走し、リラの門の下で事故を起こした・・・」
店主が読み上げる新聞と、通りでバルビエごっこをする子どもたちが見事にシンクロする。
「猫は警官のような鋭い目で俺を睨む」と取り乱すピエールに、シャワーに見立てたジョウロで湯を注ぐ。それはまるで花に水をやるように。
しかしそんな温かな光景は、静かに姿を消してゆく。
ちらちらと降る雪なんてまったく気にならなかったのに、途端に寒さが迫ってくる。
取り戻したお金の束は冷たく、パスポートを燃やす暖炉は体を温めてくれはしない。
他人を想ってした このことも、結局独りよがりだったのだろうか?
真夜中、深い雪に銃声が二発響いた。