津軽系こけし

スパイダーマン2の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

スパイダーマン2(2004年製作の映画)
4.6
君の夢になれるなら


ライミ版スパイダーマン1は私が初めて劇場で鑑賞した映画。そしてこの2は、「グエムル」「ジュラシックパーク」に次ぐ私の感性の育ての親である。幼少の折には、オクタビアス博士のアームがほんとにかっこよくて、筒状の紙とセロハンテープでよく再現したものである。思えば私の創作嗜好は、このアーム再現に始まったのかもしれない。なんと感慨深い……。

本レビューは、きっと愚にもつかない私の思い出話で一色になる。読者諸賢におかれましては、この文畜生のナルシズムに反面教師じみた教訓を持ち帰っていただくがよろしかろう。

さて、およそ10年ぶりにこの作品を鑑賞したわけだが、その経緯についてはMCU好きの皆様であれば察するところだろう。復習がてらの時分、どうせ思い出補正で面白く観れるのだろうと舐め腐っていたが、これがなんと驚嘆づくし。自分の今の感性との結びつきや、作品としての完成度にこてんぱんにされた。

まず第一の発見は、内包されたホラーイズム。今作と並びわたしの育ての親たる「ジュラシックパーク」、当時私は理由もなく熱中していたものの、後々になってからあの映画のホラー的怪物描写に惹かれていたのだと気づいた。今作「スパイダーマン2」も単にヒーロー映画だから好きなのだと納得していたが、今回再鑑賞してみてこちらも同じ事情だったことに気づいた。意味もなくオクタビアス博士に惹かれていたのではなかったのだ。
手術台の暴走シーンなんかは、ライミ監督のホラー節が全開で暴れている。壁に追い詰められた医者を襲うシーンは、あえてアーム視点に切り替えることで、「死霊のはらわた」でも応用されていた襲撃者視点の怖さが炸裂している。他にも、このオクタビアス博士のシーンはホラーのトーンが印象に残る。点と点が繋がったような心地だった、私がホラーに目覚めたのは高校生の折だが、それより遥かに昔から私はホラーに熱中していたのだ。そしてなにより、ティラノサウルス、グエムル、オクタビアス博士、その圧倒的な怪物描写に惹かれていたのだ。

そうだ、思えば私のオールタイムベストたる「ジョーカー」も悲劇の果てに生まれたシンボル的な怪物の話だ……私がホアキンジョーカーに惹かれていたのは、彼がわたしの人生の投影である以上に、圧倒的な怪物だからだ。いやちがう、わたしの人生の投影たる彼が、怪物へと昇華される話だからだ。

そうか、今になって私の好きな映画の系統が分かったぞ!!長年探し続けたジョーカーに抱く判然としないワクワクの答えは、過去に、DVD戸棚の奥に眠っていたのだ。

あれ、これなんのレビューだっけ…?



【ここからが本作のレビュー】

さて、一世一代の大発見をしたところで本映画のレビューに踏み込もう。思い出補正の塊だと思っていたが、シナリオは孤独なヒーローの物語としてすこぶる優秀に出来上がっている。MJとの別れによるヒーローとしての葛藤、ピーターパーカーとして生きるかスパイダーマンとして生きるか、その究極の問いかけをそれこそコミックヒーローであるというところに帰結するという愛の溢れた着地。さらにそれを、敵であるオクタビアス博士の投げかけにも使うという余す所のない完結ぶり。

これだけ面白くてスマートだからこそ、スパイダーマン3のとっ散らかりぶりが悔やまれる。さて「ノーウェイホーム」この傑作を如何様にして絡ませるのか、お手並み拝見と洒落込もう。
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