かじドゥンドゥン

魚影の群れのかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

魚影の群れ(1983年製作の映画)
3.8
大間のマグロ漁師フサジロウの娘トキコが、陸奥でカフェを営む青年シュンイチと恋に落ちる。シュンイチは店をたたんで漁師になるという。漁師の苛酷な人生を知るフサジロウは、複雑な心境ながら、ひとまずシュンイチを船に乗せて漁に出る。そして初めての船上で右往左往するシュンイチが、マグロの掛かったテグスに頭を巻かれ、重傷を負う。フサジロウは嫁婿をまずは助けようとするも、かかったマグロを手放せず、帰港を後回しにしてマグロを釣り上げる。結果、シュンイチは生死の境を彷徨い、トキコは父を、マグロと人間の区別もつかない人でなしと罵倒する。

北海道の漁場に乗込んで、マグロを釣り上げたフサジロウ。この掟破りの行いに、地元の漁協では一騒動が起こる。また、すぐに手が出る短気なフサジロウのもとを去り、幾多もの男を経ながら北海道を転々としている元妻とも再会し、なりゆきで体を重ねるも、そのことを知った彼女の情夫とトラブルになり、フサジロウはまたもや暴力に訴え、やはり何も変わっていない粗暴な男だと元妻に愛想を尽かされる。

大間に戻ったフサジロウ。シュンイチは漁船を買って漁に出ている。トキコは自ら父と絶縁。大間の苛酷な海が人を変えるのか、シュンイチはトキコの体を粗暴に扱い出し、フサジロウに似てくる。

或る日、沖に出たシュンイチが一晩戻らない事件が生じる。トキコは父に頭を下げて救援を依頼。フサジロウはすぐさま出港し、沖で負傷しながらマグロと格闘しているシュンイチと合流。嫁婿の本意を汲み取って、帰港よりも獲物を優先し、見事マグロを釣り上げるが、シュンイチは、トキコの妊娠と、それが息子なら漁師にしたいという遺志をフサジロウに伝えて、息絶える。無線でシュンイチの死と遺志を伝えるフサジロウ。それを聞いたトキコは茫然自失。漁師の家に生まれた因縁を恨む。

方言を聴き取れない箇所が多々あるが、それでもこの作品が成立しているところに、リアリズムの凄味がある。(もちろん、ネイティヴからすればデタラメな方言なのかもしれないし、そうでないのかもしれない。ただ、視聴者にとっての「分かりやすさ」に譲歩しなかったこだわりはたしかで、こういう映画に今後巡り会うことは難しそう。)