アカバネ

処刑遊戯のアカバネのレビュー・感想・評価

処刑遊戯(1979年製作の映画)
4.5
後の『野獣死すべし』の雰囲気すら感じる。ハードボイルド一直線のシリーズ最終作。

松田優作の遊戯シリーズということで、本作はシリーズ3作目にして最終作にあたる。ではこれまでのシリーズが如何なるものだったのかといえば、「超一流の殺し屋だけど普段はダメ男」という設定の主人公の魅力だけで、見事に続いてきたものだと個人的には考えている。この設定のギャップが、他のハードボイルド映画と比べても本シリーズの主人公に愛着を抱かせやすくしているのかと。そして何よりも、「松田優作」というブランドのデカさである。男なら誰しもが...少なくとも私は彼の演じる鳴海昌平の真似をしたくなるくらいには「男らしさ」を感じた。彼の影響力は普遍のものである。

そんなこんなで、「殺し屋」というハードボイルドの面と「ダメ男」というコメディの面が同居した主人公の鳴海昌平が一番のうま味な本シリーズである。しかし、本作は過去2作と比べると驚かされる。コメディ調の場面が一切なく、ハードボイルドに徹底しているのだ。個人的にはあの雰囲気は、本作の村上透監督が後に撮る『野獣死すべし』の松田優作にも通じる危うさがある。
これは衝撃であるが、前作『殺人遊戯』のコメディ場面が多かったことや、本作がシリーズ最終作であることを考えれば理解できなくもない。
とは言っても全編で目立つのはこれと、ヒロインの直子を演じるリリィの演技が素人目に見てもアレなくらいで、他は過去2作同様しっかり楽しめるものになっている。
特にシリーズの十八番である長回しの銃撃戦は本作も健在であり、相変わらずの荒々しくも観易いカメラワークも相まって夢中になる。安易に女性と深い関係を結ばないあたりも同様に格好良く、私みたいなファンをますます独り者に仕上げていくのだった。
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