無影

ゴジラの無影のレビュー・感想・評価

ゴジラ(1954年製作の映画)
3.7
あらすじや内容は各所で聞いていたから知ってはいたけど、実はちゃんと観たことのなかった初代ゴジラ。アマプラで配信が始まったので、視聴。
最新作の『-1.0』と比較してみると、色々面白かったです。まず、本作は反核や反戦のメッセージが前面に押し出されていて、そのテーマ性が単なる怪獣映画を歴史的傑作にまで押し上げる一因となっていますが、『-1.0』はそういった要素が感じられない無味無臭の純粋なエンターテインメント作品に仕上げられていたという点です。この変化は、戦後間もない頃で権力や戦争への忌避感が強かった当時と、反戦・反核すら思想として相対化された現代の違いにも通じるのかなと思いました。本作で国会が破壊されるシーンでは吉田茂内閣への批判が強まっていたというのもあって劇場でスタオベが起こったらしいですが、現代でそれをやると「思想が強い」とか言って批判されるのかな。次に、本作では終始国の組織である防衛隊がゴジラ対応に当たっていましたが、『-1.0』では海神作戦を民間人が実行していた点です。ゴジラ出現という異常事態に対して、本作は公が責任をとりましたが、『-1.0』ではその公の存在が前には出てきません。この違いに、公助よりも前に自助・共助を強調する現政府と、いまだ復興の進まない能登の光景が思い浮かびました。
今では日本特撮のスタンダードとなっている着ぐるみでの撮影は本作が初めて採用したというのは、知りませんでした。今ではモーションキャプチャーが流行りですが、特撮映画はその時代の最先端の撮影技術を味わうことができて面白いですね。
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