滝和也

ゴジラの滝和也のレビュー・感想・評価

ゴジラ(1954年製作の映画)
4.3
昭和29年。この年程、映画を語るにおいて大事な年は無いのかも知れない。
ヒッチコック「裏窓」
ヴィスコンティ「夏の嵐」
フェリーニ「道」そして…
黒澤明「七人の侍」
そしてこの作品と時同じくして東宝で咆哮を上げた作品

「ゴジラ」

黒澤明の盟友本田猪四郎監督、特技円谷英二、音楽伊福部昭。3人の特撮のサムライが世界を驚かせた!

前振り長くなりました。もう初めてみた時は大興奮。如何にこの作品が凄かったか。ゴジラの災厄として、戦争、核の象徴としての存在感たるや、この後作られるシリーズ作品の比ではありません。そして特撮。正に天才円谷の真骨頂。ストップモーションを諦め、ミニチュアとキグルミによる特撮は正に日本映画のエポックメイキングとなります。見せ方のお手本ですね。白黒映画である故に返ってリアルであり、大迫力です。またスピルバーグがジョーズで真似た様に、あのデカさなのに簡単に姿は出てきません。それによる期待感、神秘性は半端なく、最初に顔だけが映るシーンのインパクトたるや、当時の劇場では悲鳴すら上がったことでしょうね。

ドラマ部分も河内桃子、宝田明、平田昭彦の当時若手のホープを起用。重鎮志村喬が画面に厚みをだします。やはり平田昭彦でしょうね。戦争の被害者でありながら、核以上の兵器となる可能性をもつ水中酸素破壊剤、オキシジェンデストロイヤーを作りし苦悩、悔恨、そして覚悟。彼を名優たらしめるには充分でした。そのラストは涙なしには見ることはできません。彼は84年ゴジラ復活の際も出演を心待ちしていたそうですが、その直前亡くなっています。マッドサイエンティストと言えば平田昭彦になっておりました。

黒澤明は盟友本田監督について語ります。あいつは良い奴なんだよ。真面目で勤勉でと。ゴジラ来襲時のTV塔からの中継で近づくゴジラに逃げず実況するアナウンサーのシーンに彼の勤勉さが表されていると。確かに逃げますよね。黒澤は彼を生涯信頼していたそうです。勤勉な本田監督の細やかな演出、天才円谷の発想、そしてもう一人の天才、巨匠伊福部昭のスコアが一体となった特撮、日本映画が誇る一本。

シンゴジラとの対比も楽しいかも知れません。ハリウッドは果たしてこれを超えるものを作れるのでしょうか。いや無理でしょう。唯一の被爆国である日本人のメンタリティ、それが無いアメリカには不可能でしょうから。
滝和也

滝和也