ナミモト

阿修羅のごとくのナミモトのレビュー・感想・評価

阿修羅のごとく(2003年製作の映画)
3.5
森田芳光監督作品は、大学生の時に『家族ゲーム』を見たことがあったきりでしたが、近頃、いろいろ見てみようと思い立ち鑑賞。

豪華な女優の共演、それだけでも見どころが余す所なくあるのですが…笑

印象に残るのは、特に、シーンの終わりや切り替わる時に、ちょっと気になる小さな動きが挿入されている点ですね。
例えばそれは、机から落下したガラスのコップから床に散らばるビーズ、足の裏の落書きとその足首の動き、それらに関して、そのあとに特に詳しく語られるわけでもない。でも、それらの断片は目を引き、ストーリーの細部をたしかに鮮明にしている。

あと、映画の冒頭のは、齧る音(咀嚼音)が面白いですね。鏡開きのおかきを齧る音。みんな、おかき食べながら、70代のお父さんが実は不倫している話が三女から持ち出されるわけですが、おかきが、みんなの口の中でそれぞれバリボリ…笑(台詞いう時、口の中におかき残っちゃうな、と思いながら見てました)。そして、この鏡開きから、ラスト近くのお正月のシーンまで、この家族にとってほぼ一年が過ぎたことがわかるのですね。
覚えているところでは、蕎麦屋の揚げたての天麩羅を齧る音、うどんを姉妹それぞれが啜る音とその絶妙なタイミング(みんな、蕎麦じゃなくてうどんなんだな、と思ってみていたら、すする音がうどんの方がいいなと思ったり)。
四女の配偶者となる人(中村獅童)とお父さんの三人の食卓のたくあん。たくあんをボリっと齧ってからの「どうも」笑。
不穏な空気がただようなかで、なんか間の向けた感じがなくもないですが、実はこの間の抜け方がポイントだと思います。笑っていいんだよ、ていう安心感が、まさにこの家族らしいというか。
例えば、おかきや天麩羅の衣って歯で齧る時はバリッとかサクッとか音を立てて、その破片は口の中で噛み砕く中で、ちょっと痛かったりするわけですが、喉に呑み込んで胃の中におさめてしまえぼ、なんて事はなくて、他の食べ物やお酒なんかと一緒に胃袋が消化して体は取り込んでしまう。これは、生活なんかもそうかもしれなくて、このストーリーでいう、父親や旦那の不倫(とその疑惑)は起きた時は夫婦間がザラザラと波立つわけですが、「10年たてば笑い話になる」かもしれない。そうして、誰かとの生活は続いていく。呑み込んでしまえば、あとは自然とおのずと吸収されていく。そんなこともあったね、と。

四姉妹ものとしては、やはり是枝監督の『海街Diary』にも続くと思います。長澤まさみも本作にでてますね。
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