半兵衛

ある殺し屋の半兵衛のレビュー・感想・評価

ある殺し屋(1967年製作の映画)
3.8
10代のときには殺し屋雷蔵の冷徹さとその鋭くもなにかを抱えている目に魅了されたが、今見直すと完璧な雷蔵にとって変わろうとするもそれでいて彼に対して尊敬の念を抱いていてどこか爪の甘い成田三樹夫のダメ男っぷりが愛おしい。あと成田が能力がないくせに野心が強すぎるためかボスである小池朝雄ですら彼が自分に変わって成り代わろうとしているのがバレていて、「あーこいつ俺を出し抜こうとしてるな」という目で見られているのが情けなくて笑える。

増村保造の脚本は安アパートに集まった主要三人の会話から過去へと移り、三人が何をしようとしているのか、どうして彼らは一緒に行動するのかを丁寧にシンプルにかつ淀みなく説明してテンポよく物語を進めていくのが巧み。数少ない増村らしさを感じさせる戦争への思いを雷蔵が語る場面は若干余計かなと思いつつも最小限にとどめ娯楽映画の形を整える職人・森一生監督の手腕も見事。

そして雷蔵、成田、悪女の野川由美子による演技や関係性も最高で大映特有のアダルトで渋い画調とマッチしている。

雷蔵ではなく成田三樹夫のカッコ良さそうで今さら何を言ってるんだと突っ込みたくなるダメっぷりが極まった発言で締め括られるのが憎い、それを受けての野川の対応も◎。

この時期大映の作品に出ていた小林幸子が結構目立った役で出演しているが顔といいオーラといい地味で、むしろちょっとしか出ていない渚まゆみの方が存在感がある。
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