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ある殺し屋のかえるBOOKSのレビュー・感想・評価

ある殺し屋(1967年製作の映画)
4.0
この前、テレビで尾上松也が出ていて、ふと、ああ雷蔵みたい。と思った。
どこが似てるの?って話なのだけど、顎のラインが似てるです。
梨園の人たちは幼い頃から柔らかいものばかりだから顎のラインがとてもソフト。悪く言うとお坊ちゃまだから顎のラインが弛んでて”ぬるい”のである。
そこで『ある殺し屋』。
映画の中執拗にカメラは市川雷蔵を下から煽る。たぶん、威圧感を出したいのかとも思うのだが、私にはこの雷蔵のぬるい顎のラインが気になって気になって……。
すごく好きな日本映画なんだけど、この雷蔵の下からの煽りと、アジトで食べる寿司折の場違い感が気になってしょうがない。でもこれも魅力かな。
この映画の中で市川雷蔵は浮いてる。脇を固める三人が抑制が効いたすごくリアルな演技をしていて、その中で雷蔵が浮いてる。菩薩みたいに浮いてるわけだ。受けた仕事は必ずやり遂げるストイックな一匹狼の殺し屋、昼の顔は料理人。だからまあしょうがないかもしれない。その浮世離れした主人公に雷蔵がぴったりなのだ。市川雷蔵、野川由美子、成田三樹夫、小池朝雄とをキャスティングした瞬間に、この映画の成功は決まったも同然だったのかも。
それにしても市川雷蔵って役者は不思議だ。
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