岡ゴズ

カリスマの岡ゴズのレビュー・感想・評価

カリスマ(1999年製作の映画)
3.9
世界の法則を回復せよ。
冒頭犯人から受け取ったメモに書かれた文字は物語に一切絡んでこないが、どうやら監督は森の中で起こっているという事態が、外の世界に波及しているのである。ということを描きたかったようだ。
ラストシーンで遠く、恐らく役所広司がやってきたであろう街、東京?が燃えている。そんなシーンで終わる本作には、9.11前の世紀末、世界など崩壊してしまえ!という雰囲気が漂う。

本作は10年以上前に書かれた脚本の念願の映画化。
当初の本では、森を滅ぼす毒素を発するカリスマの木は一本で、その木が滅ぶのと引き換えに森が全部再生し、死んだ人たちも生き返る。そして役所広司が木を原産地である中国に戻しにいく。というハッピーエンド?だったようだ。
そしてその本は、主人公の刑事(役所広司)が山の中に逃げ込み、警察内部の秘密組織に裏切り者として処刑されるところから始まる本に改稿される。死んだ役所広司はカリスマの木によって再生され、劇中、何度死んでも蘇る不死身の人間として描かれたようだ。しかし、その設定はあんまりすぎると変更、さらにはご本人、カリスマの木を2本にした理由を覚えていないそうである。
こんな大胆な脚本改稿ができるなんて、、、、。
とにかく勢いでやってしまい、しかし、この監督の場合そのあとの説明義務をキッチリ果たす。だから海外で評価される。それが後付けであろうが、なかろうが。
『黒沢清の映画術』を読み、黒沢リテラシーが高まってきたように感じる。黒沢清が何を考え映画を撮ってきたかが伺える、必読書である。
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