すずす

冷飯とおさんとちゃんのすずすのネタバレレビュー・内容・結末

冷飯とおさんとちゃん(1965年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

60年代、最も映画人に愛された作家と云っても過言ではない山本周五郎の短編小説を3話のオムニバスとして映画化した東映時代劇の佳品。
監督は田坂具隆、主演は3作通して中村錦之助。

『冷飯』は江戸時代、侍の家の三男・四男。つまり、継ぐ家を持たず、分家される事も出来ず、長男の実家で厄介者として生きるしかない男たちの話。そんな男が恋をするが、所詮は「冷飯」の身分。古本を集めるのが趣味
の彼に振ってわく奇蹟。
あの天守閣はあるが、櫓の形から、舞台は金沢か江戸かな!?
とても珍しい江戸時代のラブコメ、3つの中で私はコレが一番好き。

『おさん』は、大工職人の参太が茶屋の女おふさをお供に、江戸へ向かう道中での話。
彼は、床で別の男の名を口走る妻のおさんを捨てて、大阪に行っていたが、2年が過ぎ、寄りを戻そうか悩み、江戸へ向かっていた。おさんは身を持ち崩し、男から漢へ渡り、遂には殺されていた…
仄かなエロを交えたファンタジーですが、男の描く勝手な女性像は、今の時代じゃアウトに思えます。

最後は、時代に取り残されうだつが上がらず、酒に溺れる火鉢作りの職人の話。
そんなダメオヤジ『ちゃん』を、ご近所の酒屋の女将や家族は見捨てずに庇い続けます。
錦之助の酔っ払い芸が見事すぎ!

オムニバスとしての芯はなく、雑多な3作の寄せ集めですが、山本周五郎らしい江戸庶民の世界観は心地よい後味として残ります。
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