めしいらず

それからのめしいらずのレビュー・感想・評価

それから(1985年製作の映画)
3.3
言わずと知れた漱石の前期三部作の一つを映画化した文芸作品。原作のイメージに忠実に、そして時に鮮烈な映像感覚を交えながら格調高く漱石ワールドが展開。明治末期の時代の空気が活写されていて見事だった。愛する女を友人に譲り娶らせた高等遊民の主人公が、その後の女の不幸な行く末に気を揉み散々懊悩した挙句、家族や友を失うことすら受け入れて、とうとう友から略奪してしまうまで。本心を秘めて堪えている旧来的な美徳感覚と、それを打ち遣りたい新時代的な心の趣きとの対立。言いたい思いを言えないでいる二人を松田、藤谷が繊細に演じていた。言葉に依らない愛なありようはやはり日本人的な美意識だと思う。
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