福福吉吉

黒く濁る村の福福吉吉のレビュー・感想・評価

黒く濁る村(2010年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
ユ・ヘグクはそれまで接触の無かった父のユ・モッキョンが死んだことを知り、父のいた村を訪れる。その村は村長のチョン・ヨンドクによって牛耳られた村であり、ヘグクは表向きの親切な振る舞いとは別に周囲の村から自分を排除しようという空気を感じ取る。父の死因すら分からない状況に不信感を持ったヘグクは村に滞在して村を調べようとするが...。

◆感想◆
疎遠だった父の死を契機に息子が村人たちの妨害に遭いながら村に隠された真実を突きとめようとするストーリーとなっており、父が村に最初に訪れた1978年の状況と現在の状況が絡み合うスケールの大きなものになっています。最後にならないとストーリーの全貌が見えてこないのでモヤモヤした状況が続きますが、村の陰鬱な登場人物たちとの接触や卑劣な妨害工作など興味を欠かせないよう工夫されています。

主人公のユ・ヘグク(パク・ヘイル)は前述のとおり、それまで父と疎遠だったため、父についてほとんど情報を持たないため、ストーリー前半は訳も分からず村人たちによる嫌がらせを受ける人物として印象が薄かったと思います。しかし、ストーリーが進むにつれて、ヘグクが検事を左遷させたことなど元刑事らしきことが判明してきて、強いバックボーンを持つ人物としてストーリーを引っ張っていき、良かったと思います。

一方、最大の敵となる村長のチェン・ヨンドク(チョン・ジェヨン)は昔は元刑事でしたが、ユ・モッキョンの人望を利用して村の権力を掌握した得体のしれない人物として描かれています。あらゆる分野にコネクションを持ち、金などを握らせて相手を掌握していく様子はまさに悪党と言える人物でした。

主人公ヘグクの父、ユ・モッキョン(ホ・ジュノ)は宗教家で村の祈祷院で村人の信望を集める聖人のような人物でしたが、チェン・ヨンドクの人心掌握術の前に聖人から普通の人間に堕とされていまいます。それがとても人間臭くて良かったのですが、モッキョンの行動について描いているシーンが少なくて、もう少し深く描いて欲しい気がしました。

本作はチェン・ヨンドクの悪い意味での人間臭さ、欲深さが強く出ているとともに、彼の手強さが最後まで続いていたことが面白さに繋がっていると思います。上映時間161分は少し長いと感じましたが、その分、人の醜さが執拗に描かれていて良かったと思います。

鑑賞日:2024年1月14日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
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