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格闘技世界一 四角いジャングルのKKMXのレビュー・感想・評価

3.5
 ハッピーニューイヤーのど真ん中ッッ!

 年明け早々、目ん玉飛び出るストロングスタイルを観たくなり鑑賞。まぁ、昨年物故者となった巨星・アントニオ猪木の現役時代をまったく知らないので、その足跡を辿る意味でもあります。
 ちなみに、本作は梶原一騎プロデュースのプロレス・空手・キックをまとめたドキュメンタリーっぽい3部作の1作目です。


 とりあえず自分にとって猪木と言えば新日本プロレスを地獄のど真ん中にブチ落とした老害という印象。90年代末〜ゼロ年代前半にかけての猪木は、小川直也をけしかけて愛弟子・橋本真也を潰す、永田や中西といった脂の乗った選手に総合をやらせて恥をかかせてプロレスの価値を落とす(でも永田さんだけは面白かった)、新日最大の黒歴史であるアルティメットロワイヤル開催等々……とにかく猪木=クズでしかなかったです。政治家としても胡散臭いし、明らかに上手くいかない永久機関みたいな事業に投資しているし、ユークスが新日を買ったとき、俺は心底良かったと思いました!
 その後、新日本は棚橋らの活躍もあり復活、現在はさらに洗練されて業界の盟主に返り咲きました。ゼロ年代末期に、よく買いに行く服屋のお姉ちゃんが棚橋ファンで新日を観ていると話しており、ついにプロレスがマニア以外に届き始めたぞ!と俺は嬉しくてたまらなかったですね!

 とにかく猪木はバッドイメージしかないものの、日本の格闘技の歴史を作った偉人であることは間違いない。猪木が始めた異種格闘技からUWFを経由し、修斗やパンクラスといった日本発の総合格闘技が生まれ、やがてプライドが誕生して桜庭和志の登場に至ります。
 一方で、猪木のプロレス的な臭みが現在の日本格闘技界にも蔓延して、興行色が強く、純粋な格闘技になりきれていないのも事実。やっぱり猪木は功罪の振り幅がデカすぎます。

 そんなカオスな偉人を理解するには原典に当たるのか一番!なので伝説のアリ戦も含めて、全盛期の猪木を体験することにいたしました。カ…カテェ!


 で、実際に観ると、面白かったのは猪木の試合ではなく、ベニー・ユキーデや藤原敏男といったキックボクサー勢でした。
 猪木の試合で良かったのは序盤にチョロっと流れるアリ戦だけだね。アリ戦が中心なのかと思いきや、ほとんどカットされていた。しかし、この試合は猪木が徹底してスライディング式のローキックを狙う等、緊迫感がハンパない。異種格闘技でボクサー対策にはローキックという公式をなぞっている猪木は流石だと思いました。
 一方でモンスターマン戦はプロレス。スターダム推しとしては「フェニックススプラッシュやらないの?」的に思うので観ていて面白さは感じられない。かといってロック様とかネイチみたいな面白マイクも無く、正直ガチでやって欲しかったというのが本音です。やはりガチ風味の格闘技プロレスは改めて観るとツラい!前田日明vsニールセンも割とキツかったからなぁ……ただ、これはあくまでも未来人の視点でしかなく、リアルタイムだったら絶対に猪木スゲーとなったはずです。

 一方で、キックボクシング編は熱い!ユキーデと藤原のライバル物語が主軸です。藤原は敵地タイで史上初の外国人選手としてベルトを奪取した名選手で、パンチとローキックが強くて明らかにカッコいい。タイの選手よりもローキックを多用し、現在のキックボクシングの基礎スタイルをすでに完成させているように感じました。
 ユキーデは赤のパンタロンと必殺技がスピンキックとキャラ立ちバッチリで、しかし基本的にはトリッキーなことはしない正統派。いや〜、この2人の対決が楽しみです!

 というわけで、今年もアレだ、ラックリ行きましょう!
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