めしいらず

瀧の白糸のめしいらずのレビュー・感想・評価

瀧の白糸(1933年製作の映画)
2.9
戦争を挟んで六度も映画化されているのは、昔気質の日本的美徳、義理と人情、見返りを求めぬ献身の物語だからだろう。女の健気さが多くの日本人の心を捕らえて止まない。女が惚れた男の立身出世の為に尽くす。その間に降りかかる様々な試練。仲間達の苦境に手を差し伸べ、悪意の邪魔立てに挫けそうになりながらも宿願を果たし、悲哀を背負い込んで死ぬ。男を思うあまり犯してしまった女の過ちを、出世した彼が裁かなければならない皮肉。心の中は真逆でもその部分は曲げられない。二人の人生のけじめはある種の心中であったのかも知れない。悲恋物語ではあるけれど活弁入りの真骨頂を見るような冒頭の馬車と人力車のくだりが楽しい。ラストが明らかに端折られているのはフィルムが現存していない所為らしい。
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