佐藤克巳

瀧の白糸の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

瀧の白糸(1933年製作の映画)
5.0
女優初のプロダクションを設立し頂点に達していた入江たか子の入江の為の映画造りになっているが、スランプ気味だった溝口健二監督を得意の鏡花的世界で甦らせたサイレント映画の傑作。学生の頃文芸座で初見時、フィルムの損傷が激しく失望感を抱いた印象が強く避けて来たが、今回デジタルクリア版活弁入りを拝見し、水芸人白糸の悲劇的生涯を眩いばかりの入江が渾身の演技を披露し、改めて溝口演出の凄さも再確認した。取り分け、卯辰橋での欣也岡田時彦との再会、高利貸岩淵菅井一郎を刺し殺し逃亡する下り、佳境の法廷場面は素晴らしかった。なお、結局二人は自決する結末だが、それを暗示したかの様に、岡田は翌年持病の結核で急死する。
佐藤克巳

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