子供にとって世界は遊びのためにある。
テヘランで開催されるプロサッカーの試合を観に行くために、悪知恵を絞って必要なお金を稼ぐ子供のお話。
とてもネオレアリズモ的でどこかノスタルジックで独特の暖かさが宿る映画。
勉強は嫌いでも悪知恵だけは働くのが子供ってもんだよな。後先考えずに目先の得に飛びついて悪いことしちゃう姿が可愛くてたまらん。
自分はどちらかといえば途中で計画から抜けちゃった罪悪感に押し潰されちゃう方の子だったから、ここまで大胆なことはとてもじゃないけどできない。でも不思議と応援したくなる。少し背伸びして大人気分を味わいたいのが子供ってもんだよな。
カメラワークとか映像は特に技巧的には見えない。極めてシンプル。だから見やすい。だけどシンプルだからこそ、技巧的なことをやるよりも芯を喰った映像を確実に捉えるのが難しい。しかしデビュー作にして既に世界観も映画も完成されている。それが紛れもなくキアロスタミが意匠たる所以だ。
僕は変に難しく技巧的なことばかり考えていたけど、映画には魂が宿った物語とそれを伝える手段、そして最低限の映画的素養があれば十分なんだと再確認することができた。初心を忘れていた。凝り固まった頭と考えを叩き割れて清々しい気分だ。ありがとう。
それでも技巧的なものがない訳じゃなくて、夢の中でこれから彼の身に起こるであろうことを見せるのは素晴らしい発想だった。
自分の得だけを追い求めて他人を切り捨てても現実ではしっぺ返しを喰らうといういい教訓になったね。オチも最高に気持ち良いよ。
ちょうど50年前の映画だけど、今作られたと言われても全く違和感がないほどフレッシュ。
めちゃくちゃよかった。シンプルだけど本当に素晴らしい作品。これは大傑作。心が温かくなる作品が見たい時に超おすすめ。
※以下ネタバレ
チケット売り場の展開は読めたから、チケットの枚数に目を光らせて見てたけど余裕でチケット余ってたよな。笑
まあ展開の都合上そこはどうにでも改変出来るだろうし、あまり気にしてなかったんだろうけどちょっと可哀想だと思った。
