ぐりこ

ハックルのぐりこのネタバレレビュー・内容・結末

ハックル(2002年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

前情報なく鑑賞。
びびった。こんなサスペンス初めてみた。

最初は、のどかなカントリーだなぁ、まさかこれ、ずっとこの感じのドキュメンタリーなの!?虫と生き物と大自然に溶け込んだ人間観!?って思ってたのだけど、
全てがクローズアップショットから始まる感じ、蛇の皮や羊の毛、虫などなど、表面のテクスチャーが生々しく、めちゃめちゃ気持ち悪い。なんならミシンの機械もクローズショットあったけど、そっちの方が気持ち悪くないと思ったくらいだった。
そして、ドキュメンタリーのようにセリフなく淡々と動物と暮らす田舎町の人々の生活を撮っていくんだけど、
その中でふと出てくるおばあちゃんが作る不思議な瓶に入った液体。どうやらこの村の女たちに配っているらしい。

そして、お葬式があったり、なんとなく不穏な感じ。でも町のPR動画みたいに町の色んなシーンを挟むので不穏じゃないような気もする。奇妙ではあるが淡々としてる。まだ内容が読みきれない。

そして後半のシーン、警察官が事故現場っぽいところへ行き証拠写真のようなものを撮っている。それは養蜂家の父親の家。
(そしてのちにこの養蜂家は死んだとわかる。)
そのまま横の池の中にカメラはうつり、池の中で釣られるフナが映されるのだけど、その横にはなんと池に沈められてる別の死体が!!!
もう私が感じてたこの映画の不穏さは確実に間違っていないと確信してきた。
これはまじでサスペンス映画なのだと。
で、そのあと警察官の母親が何かの液体を捨ててる現場を警察官(息子)が発見し、なんとも言えない表情をしたり
警察官が養蜂家の家にあった証拠写真を見比べて水が減ってることに気がついたりするシーンが入り、
これがある種、養蜂家殺人の推理シーンととれるのだが、各シーンにセリフもなく映像でも全ては語られない。鑑賞者の想像に委ねられてる。

でもその後の町の中のシーンでは元々はおじさんと散歩してた豚が1匹でうろついてたり
沢山の男たちが外で簡易ボーリングしてたのに一人になってたり…。男が消えている。。

そして最後のシーンでは村の若い男女の結婚式に、白いドレスを着た町の女たちがお祝いの歌を歌うのだけど
そこで初めてこの映画の初の字幕(歌詞)が登場する。
「亭主を嫌いな女なら、毒草を準備して唐辛子を加えましょう♫亭主は8時におだぶつさ♫亭主が好きな女なら、美味しい料理を作りましょう♫」と歌う。まるで結婚式で歌うのが当然の民謡みたいな感じに。
ずっと嬉しくなさそうな新婦がこの歌で初めて笑顔になる。ゾッとする。

もうこのシーンを見て私の推理はたぶん合ってると思ったよね。

おそらくこの町の女(おそらくは妻)が、町のおばあちゃんが作った毒薬で男たちを病気に見せかけて殺しているのだと。
確かに思い返せば、このドキュメンタリー風の映画、最初から女の方が働き者な気がする。男も魚釣ったりしてたけど食べてるの自分だけだったり、ボーリングで遊んでたり。

上記歌が終わった後で歌われた一番最後の歌

「私はいく 鳥さえ飛ばぬ場所へ
私はみなしご コウノトリ
誰も支えてくれない
悲しみの人生嘆きの日々
わたしは ここ 悲しい星の下」
の意味はちょっとわかりなかったな。。夫を殺した妻の覚悟の表現?

しかもこれ1時間ちょっとの英語なんだよ…すごいよ…
あとすごいなと思ったのはタイトル「ハックル」

しゃっくりしてるお爺ちゃんが最初のシーンに登場して、ミルクを持って道端にひたすら座ってるだけのおじいちゃん。
その後もちょいちょい出てくるんだけど本当にただ座ってしゃっくりしてるだけ。
でもそのしゃっくりが起きてるときに上のサスペンスが起きてるんだよね。
そしてしゃっくりが止まったとき、天変地異かと思う地震がきて(結局これは戦闘機みたいな飛行機が町を低空飛行してたせいだった)、その地震みたいな揺れがおさまるとまたしゃっくりが始まって、元の普段の町にもどる。

しゃっくりっていう何気ない制御できないもののリズムに生きてるっていうか
この世界ってこういう意味不明なリズムってあるよなーとか思っちゃった(表現むずい)

ハックルって、ハンガリー語のしゃっくりって意味らしいです。
ぐりこ

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