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ジャケットのslowのレビュー・感想・評価

ジャケット(2005年製作の映画)
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ジャックという男は一体何者であったか。本作を後味のままの映画であったと考えることもできるし、その逆であったとも考えることができる。マッチ箱程の幅しかない世界の物語でありながら、奥行きが奈落の底程に深く感じられる恐ろしさ。それはあの拘束着体験そのものだったのかもしれない。

こういう作品で俄然本領を発揮するエイドリアン・ブロディ。あの彫刻のような顔が100分間安堵と恐怖で歪み続ける。ダニエル・クレイグも巧さを見せる。ショーン・ペン監督作品に出演していたベニチオ・デル・トロの役のように(それよりはまともな役か)いくつかネジが飛んでいた。
本作を観て思い出したのは『ジェイコブス・ラダー』のなかなか落ち着かせてくれないあの感じ。しかし、深読みし放題な分、こちらには希望も絶望も用意されていたのではないか。数年前に初めて鑑賞した時よりも、更に深く、物語に沈み込んで観ることができた。タイムリープものの映画はもう珍しくはないけれど、やはり本作は異質。ミニシアター系の良さが詰まった秀作だと思う。
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