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堂堂たる人生のgintaruのレビュー・感想・評価

堂堂たる人生(1961年製作の映画)
3.8
どこまでもかっこいい石原裕次郎がツンデレな芦川いづみと繰り広げる今風に言えば典型的なラブコメだ。トントン拍子にうまく行くご都合主義的なところももちろん多いが、今見ても普通に楽しめる作品だった。
なんと言っても芦川いづみの魅力が満開だ。

ここでは、特に作品論評をするのでなく、製作年の昭和36年の世相風俗の描写について書き留めておきたい。カラー、しかもリマスタリングされたものなのか、細部までよく見えていろいろな発見があった。

若い安月給のサラリーマンの中部周平(石原裕次郎)だが普通にバー(接客女性付きなので今ではクラブか)や寿司屋に出入りできているのが今との物価事情の違いだろうか。
今で言うOLのことをBG、ビジネスガールと言っているのが当時らしい。戦後カタカナ言葉がどんどん増えていく中、この言葉もしばらく流行っていたが、実は英語では娼婦のことだということが知られるようになって今のOLに変わったといういきさつがある。
東京から大阪への出張は夜行のつばめ。まだ新幹線のなかった時代。時計が9時10分を指していた。
奥に見えるサラリーマン風の乗客の窓際に水筒が掛けてあるのが印象的。

この映画はお酒が登場するシーンがいろいろ出てくる。
ビールが登場するシーンではすべてアサヒ。当時はキリンが圧倒的シェアを誇っていた時代だが、アサヒとのタイアップだったのだろう。
ウイスキーが登場するシーンもいろいろ出てくるが、場面場面で銘柄は異なっているのが興味深い。ちなみに昭和30年代なら舶来ウイスキーは高級品だ。
大阪のバーのママの家で飲むウイスキーはジョニ赤、みんなストレートで飲んでいるのが興味深い。他の場面でもみんなウイスキーはストレート飲みだ。ロックや水割りよりストレートが主流だったのだろうか。なお部屋の棚にはオールドパーもある。
ホテルのロビーで興亜玩具の副社長らが飲んでいたのはホワイトホース。
周平の部屋にはサントリーオールドが置いてあった。

また、周平の部屋でチキンラーメンが出てくるのが面白い。これもタイアップのようで名前を連呼するし、別の場面ではチキンラーメンの宣伝カーのようなものが背景に映っている。

ラストで周平らがニュルンベルクの国際玩具見本市へ行くというくだりが興味深い。これは実際に今も続く見本市だ。
羽田空港から出発するシーンはいかにも当時らしい。まず、空港へみんなが見送りに来る。旗を振る者もいる。海外旅行が一大イベントだった時代だ。
また、乗客がみんなJALのショルダーバッグ、女性は手提げのバッグを持っている。当時は搭乗記念で支給されていたのだね。

冒頭のクレジットで玩具提供ツクダヤとある。オセロやルービックキューブで後に一世を風靡することにもなるツクダオリジナルの前身だ。今はもうない(バンダイナムコグループに吸収)。
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