晴れない空の降らない雨

夏の夜は三たび微笑むの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

夏の夜は三たび微笑む(1955年製作の映画)
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「あくびが二人を分かつまで」

 幾つかあるベルイマンによるコメディ作品のひとつ。ヘイズコード以前のルビッチ映画を彷彿させる、ちょいエロ艶笑喜劇である。男女の赤裸々な会話や後半の狂言回しを演じる馬丁の口上、ベッドの仕掛けなど普通に面白い。かなり演劇的な作品と言ってよいだろう。多くの場面が舞台上に容易に置き換えられる。もっとも、実験的な映画を撮り始めてからも彼の関心の中心は俳優を撮ることにあったという意味で、ベルイマンの演劇人的な資質というのは最後まで保たれていたように思う。

 本作は『夏の遊び』や『不良少女モニカ』と同様に「夏」をひとつのモチーフにしている。これらの映画にとって、北欧の短い夏は、青春や幸福を意味している。本作はコメディだが、男女に対するシニカルな目線は、長続きしない男女の愛を予言しているようである。また、この時期のベルイマン映画にとって、エロティシズムはそうした刹那的な愛の喜びそのものであるとともに、それを肯定する要素であるだろう(監督の中年以降の作品は性の不毛さを感じさせるのだが)。