このレビューはネタバレを含みます
本作は今泉力哉の得意とする狭い世界での登場人物が交差する様子を面白おかしく描いた恋愛群像劇なのだが、私には他の方が言及されている“今泉力哉っぽさ”はほとんど感じられなかった
構成だけで言えば「街の上で」の源流としてこの作品が位置付けされるとは思うが、ハートフルさの欠片も無いエンディングやキャラクターの造形、会話が織り成す湿っぽさは明らかに同監督の他作品とはかけ離れている(かといってつまらないわけでもなくしっかり面白い)
特筆すべきはなんといっても会話の生々しさと登場人物達の歪でリアルな関係性で、そこに少しのファンタジーが介在することで圧倒的な気持ち悪さを内包しつつもゲスな笑いを届けてくれるのが素晴らしい
モト冬樹をはじめとしたキャストの配役も絶妙で、それぞれの人物像に妙な説得力があるおかげか、「それはありえねーだろ!」と言いたくなるような展開もさほど違和感はなく見れる
欠点を挙げるとすると序盤の盛り上がらなさだが、この部分は絶望的な終盤への前フリとしてしっかり機能を果たしているので評価が難しいところ
この作品が好きな方には他の今泉力哉作品よりも、さらに世界観が近しい大根仁監督の「恋の渦」をオススメします(地味に両作共に出演している女優さんもいる)