サマセット7

トイ・ストーリー3のサマセット7のレビュー・感想・評価

トイ・ストーリー3(2010年製作の映画)
4.5
トイストーリーシリーズ3作目。
監督は「リメンバーミー」のリー・アンクリッチ。
主人公の声を演じるのは「フォレスト・ガンプ」「プライベートライアン」のトム・ハンクス。

[あらすじ]
前作から10年。ウッディ(トム・ハンクス)たちオモチャの持ち主アンディも17歳となり、大学入学と共に自宅を離れる日が近づいていた。
もう遊ばれることはなくなったが、大切なオモチャは保管しておきたいアンディの思いと裏腹に、手違いでオモチャたちは、保育園に寄付されてしまう。
ウッディたちは、くまのぬいぐるみロッツォら保育園のオモチャたちから温かく歓迎され、新たなオモチャの楽園に辿り着いたように見えたが…。

[情報]
ピクサー・アニメーション・スタジオ製作による2010年公開の長編フルCGアニメーション作品。
監督は前2作のジョン・ラセターから、前作では共同監督や編集を務めていたリー・アンクリッチに交代。ラセターは製作総指揮に回った。

ピクサーがディズニーの子会社となったのは2006年であり、今作はディズニー傘下として製作された。
製作期間が限られていた前作と異なり、今作は4年の製作期間を確保、その多くをストーリー構成に充てるなど、シナリオは練りに練られている。

前作(2000年)からの実時間の間隔と、作中の時間経過が一致しており、観客が自分に重ね合わせやすい工夫がされている。
また、10年の時間経過により、CG技術は向上しており、今作の各所で活用されている。

前2作同様、実在のオモチャが多く登場する。
バービーとケンは典型だが、ジブリファンお馴染みのキャラクターも。

今作はアニメーション映画の記録を塗り替える大ヒットとなった。
製作費2億ドル、興収10億ドル超。

今作は批評家、一般層問わず、最高クラスの賞賛を受けている。
アニメーション映画としては史上3番目にアカデミー賞作品賞にノミネートされた。
同賞長編アニメーション賞、歌曲賞受賞。

[見どころ]
オモチャたちの心情描写!!!
CGの、しかもオモチャが、こんなにも感情移入させるとは!!!
これぞ至芸!!!
第1作と円環をなし、第2作の問題提起を真摯に突き詰めた、3作目として完璧なシナリオ!!!
前2作に輪をかけた、重層的なテーマ性!!
凄すぎるぞ!!ピクサーの本気!!!

[感想]
シリーズ最!高!傑!作!!!

トイストーリーの魅力は、CGで描かれるオモチャたちの、演技、演出、表現、シナリオの織りなす、情感豊かな感情表現にあった。
その点、今作は、前作はおろか、第1作をも超えている。

あの、「深淵」を覗いた絶望!!!!
アンディを見つめるウッディの、ある感慨!!!
そして、感動必至のラストシーン!!!!!
どのシーンの演出も圧巻で、映画史に残るレベルだ。

これらの感情のジェットコースターが、シリーズ中でも最高に楽しい「脱獄アドベンチャー」を超えた先に現れるのだから、たまらない。

ファッショナブルなバービーとケンや、「セニョリータ」と囁くバズを始めとした、オモチャたちの面白シーンも相変わらず満載。
前作で感じたパロディのくどさも、今作では感じなかった。

今作では敵役も過去最高に凶悪で魅力的。
哀しい過去を持つロッツォはもちろん、ビッグ・ベビーの迫力たるや!!!

第一作冒頭につながるラストカットの満足感!
完璧!!

[テーマ考]
今作のテーマは重層的だ。

メインテーマは、何より、ウッディとバズやジェシーらオモチャたちの友情ドラマだろう。

そして、前2作と同様に、持ち主であるアンディとの関係性を通して、自分は何のために生きるのか、という、存在価値論を語るドラマでもあり続けている。
今作のアンディの下での役割を終えつつあるオモチャたちは、定年間際のサラリーマンや、子の独立後の親の姿を彷彿とさせる。
会社に、仕事に、育児に、全てを捧げてきた者にとって、その会社を退職することになった先、子が家を去った後に、何が残るか?
自分の価値はどこにあるのか?
普遍的な問いが突き刺さる。

こうしたテーマが前2作以上に身につまされるのは、今作の描く危機が、過去になくハードで絶望的だからかもしれない。
あの深淵!!!
誰もが最期に迎える光景!!!
その場でのウッディたちのとる行動!!!
私は泣いた!

さらに、最終盤、ウッディは、アンディに対して、精神的に、どのような存在であろうとしていたか、がセリフでなく、映像と演出で明らかになる。
つまり、今作は、普遍的な親と子の関係の変化を描いた作品なのだ!!
もう、このシーンでは、世の親たちは号泣せざるを得ないだろう。
私は泣いた!!

さらにさらに!!
オモチャたちの苦悩や葛藤を通して、ヒトの幸福論を描いてきた3作のラストにおいて、ついに「オモチャの幸せ」というべきナニカが浮かび上がる!!!
もう、ラストシーンは、全人類が嗚咽を堪え切れないだろう。
私は泣いた!!!!!

ピクサーの本気!恐るべし!!

[まとめ]
ピクサーアニメの看板シリーズ第3作にして、子供もニッコリ、大人も号泣の、シリーズ最高傑作。

これを観てしまうと、逆に4を観る気が失せるのが、今となっては欠点といえば欠点か。
いずれは観るにしても、しばらくは3の余韻を噛み締めたい。