あなぐらむ

ぼんちのあなぐらむのレビュー・感想・評価

ぼんち(1960年製作の映画)
4.2
山崎豊子原作の大阪・船場のぼんぼん市川雷蔵の女遍歴物…なのだが和田夏十のホンは当然そんな所に終わらず、翌年の「黒い十人の女」の前哨戦の様に翻弄され踊らされるのは雷蔵(男)の方。
玉緒、若尾あややに京マチ、東宝から草笛光子、越路吹雪まで登場の女達の美しさと強かさに唖然となる。
何かというと商家のしきたりを持ち出し「女権」を振り回す祖母の恐ろしさ、妾達それぞれの見事な男操縦法の前で、世間知らずのぼん(雷蔵)は目を丸くするばかり。
雷蔵は案外この軟派な線こそ本来の味ではないか(実際ぼんだし)。この因習と血への拘りがもたらすものの映像化(宮川一夫の素晴らしい仕事)は、角川時代の市川監督の横溝ものへと続いていく。
しかしあの大阪大空襲の爆撃シーンすごかった。焼け跡とか。父はこの大空襲の体験者で、晩年、この話をよくしてくれた。船場の船のゴムが焼けて、気を失う程だったそうだ。