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ぼんちのkojikojiのレビュー・感想・評価

ぼんち(1960年製作の映画)
4.0
ジャケ写のイメージでこんな雷蔵観たくないと、避けていた映画。
ところが全然違った。完全にツボにハマってしまった。
こんな雷蔵、観たことない。
やっぱり役者だ。

山崎豊子の同名小説を市川崑が監督して映画化。
脚本は市川と和田夏十
撮影は宮川一夫
音楽は芥川也寸志。
豪華スタッフ。

 四代続いた船場の足袋問屋河内屋の一人息子喜久治『きくぼん』(雷蔵)。
祖母・きの(毛利菊枝)母・勢以(山田五十鈴)がこの家を牛耳っていて、彼はほとんど彼女達のいいなり。
この家は船場河内家のしきたりが全て。しきたりを判断するのが祖母きの。だから彼女が全ての家社会なのだ。例えば、妾の挨拶の仕方とか、妾の子供が男の子だったら5万円で里子に出すとか、細かいところまでしきたりがあり、それがすべての判断基準なのだ。このしきたりがまた面白い。

 無理やりもらった嫁もしきたり(大根の煮方が違うと言っていた?)で追い出すぐらい。
 やむなく「きくぼん」は、妾を次々に作っていく。「きの」達にとっては、跡取りもできたことだし、一緒に住む妻より妾の方が推奨なのだ。この女達に囲まれた「きくぼん」の半生が面白、可笑しく描かれている。市川崑の演出が冴え渡って、なんとも味わいのある可笑しさだ。これがたまらない。
雷蔵30歳の演技。流石に老け役は無理があるが、話の中心はそこではないので、そこは愛嬌ということで。

この映画の女優陣が豪華。
 若尾文子
 京マチ子
 草笛光子
 越路吹雪(こんなことしてたんだ⁉︎)
 山田五十鈴
 これだけ揃うと女優達の演技の火花が見えるようだ。
 そんな女優陣の中で、ひときは強烈な印象を受けたのが、祖母役、この家の主「きの」を演じている「毛利菊技」だ。まさに明治女。(ひさしぶりに祖母を思い出した。)
その「気骨」を地でいくような演技は惚れ惚れする。
日本も戦前であっても、決して誰も彼も女性は虐げられた存在だったということはない。こんな家社会もあった。我が家も祖母が生きていた時代はこんな感じだった。レベルは全然違うけど。

 見どころはこの「きの」ときくぼんの妻を引き取りに来た仲人役の北林谷栄とのやりとりのシーン。言葉の応酬が凄まじく、めちゃくちゃ面白い。ここは必見のシーンだ。
 この毛利菊江という女優さん、昔はよく観てたのにすっかり忘れていた。素晴らしい女優さんだ。

フォロワーさんのレビューを読むと、「なんで今まで観なかったんだろう⁉︎」という言葉を時々見かけるが、この作品はまさにそれだ。観てない傑作はまだまだある。
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