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ぐるりのこと。のkaneのレビュー・感想・評価

ぐるりのこと。(2008年製作の映画)
4.3
包容力(抱擁力)溢れる人生賛歌。
とても繊細で触れれば崩れてしまいそうなくらいに脆く、取り扱いに厳重に注意しなければいけないような作品でありながら、少し身を引いて観るとカラッとした空気を纏い、どこか陽気で爽やかでもある。

意識的なのか無意識的なのか、ポーズを取っている、あるいは取らされている人たちがこの映画には多く登場する。端的には欺瞞とも言える、人とはこうあるべきだという姿や態度を演じている親戚らや犯人だったり被害者の親族だったり。
それがリリーフランキー演じるカナオの目を通すことによって、本心が丸裸にされていく。本性を暴かれてる。そうは言っても、決して避難しているわけではない。なぜなら、それが上手く生きる技術でもあるのだ。一番最後の法廷のシーンは嘘と真実の決闘とでも容易に形容することも出来るが、逆に一筋縄ではいかない生きることの複雑さが凝縮されているようにも感じた。

彼らとは対照的に、ポーズを上手に取れない木村多江演じる翔子の傷みが物語通して真摯に描かれており、彼女の切実な訴えがひしひしと伝わってくる、と言っては軽率だが、わからないけどわかる、わかるけどわからない、というような地に足がつかない感覚。
それがまたリアルに感じられ、不安定で落ちつかないのだが、カナオの有り余るほど抱擁力が観ているこちら丸ごと包み込む。どう生きるか云々を差し置いて、その人自身を受け入れ、全肯定してしまえるほどの無償の愛を見せつけられた気がした。
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