Hotさんぴん茶

ぐるりのこと。のHotさんぴん茶のネタバレレビュー・内容・結末

ぐるりのこと。(2008年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

実際は、2015/4/12に視聴。スマホの中に当時のメモを見つけたのでここに載せる。

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自分が生まれた年に近い頃のお話で、いろいろ考えさせられた。

当時のいろいろな事件が出てきて、時代の雰囲気が読み取れる。法廷画家のカナオが、事件にカナオ自身の境遇を重ね合わせている描写がある。子どもが被害者の事件、涙を流す加害者…。多くは語られないが、失った子どものことや、父を失っても涙を流さなかったことに思いを馳せているのかもしれない。

こういった事件は、家族という存在と切り離せないと思う。被害者にも加害者にも家族がいる。ニュースを見る人も家族に思いを巡らせる。自分の親は、当時何を考えていたのかな、とふと思った。

平凡な日々とテレビの向こうの大事件。全く関係ないようにも見える。でも、一歩間違えたら巻き込まれるかもしれない。自分たちはそんな中に生きてるんだなと思った。平凡って、儚く貴重なものなのかもしれない。

主人公夫婦については、こういう夫婦もいるのかなと思って見ていた。自分は未婚だし、この夫婦は自分の両親とも違う感じなので、少し距離を置いて観ていた。結婚したら見方が変わるのかもしれないけれど。

特に、カナオには少し感情移入しにくかった。飄々として、感情を表に出さないからかもしれない。でも、いいことを言っていたと思うし、妻を支える姿は良かった。

翔子には感情移入できた。翔子の追い詰められていく様はとてもリアルで見ていて苦しかった。理想と現実が離れすぎて苦しくなる気持ちが、痛いほど伝わってくる。

この二人については、もう少し、変化の過程を詳しく見たかった。1年後、と突然場面が変わってしまうので、空白期間は想像するしかない。あと、下ネタはこんなにはいらないな、と個人的には思った。

脇役は個性的だった。喘息で犬を避けてるくせにタバコは吸う母、子どもを持って心が綺麗になったといいながら、毒を吐く義姉。わがままなのに、本当のやさしさを呼びかける同僚。矛盾した人たちが出てくる。変だな、とは思うけど、人間らしいリアルさがある。

法廷画家の仕事風景は、新鮮だった。記者たちが判決を聞いたとたん、走って行くのにはびっくりした。ベルトに名画の飾りをつけている男性は良い味を出していた。法廷画家に興味を持ったので、この仕事に関する映画があったら観てみたい。

最後に、エンドクレジットで流れる植物の絵と被告人の似顔絵は対照的で感慨深かった。同じ生き物なのに、なぜここまで生き方が違うんだろう、と。犯人たちは、生命力を間違った方向に使っているな、と悲しくなった。対して植物は、美しく咲き誇っていて、輝いているように見えた。限りある命なのから、この植物のように、のびのびと生きていきたい、と思った。