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放浪記のtheocatsのレビュー・感想・評価

放浪記(1962年製作の映画)
4.1
嫌々見始め徐々に引き込まれ感心へと帰着

林ふみ子文学は知らず興味のないテーマではあるが成瀬監督作品ということで見なきゃ分からんだろうと視聴。

詩人かつ小説家として名をなした林ふみ子の人生の軌跡が描かれる本作品。
演じる高峰秀子がいじけ顔いじけ声、ぐにゃっとしただらしない姿勢で貧乏が板についた林を正しく熱演。

生まれついての貧乏気質に加えイケメン男に滅法弱く、3人続けてたぶらかされ貢がされ騙され足蹴にされるのだから、呆れ果て「あんたも悪いっ!!」とこちらも非難したくなるほど。
※彼女に優しく献身してくれるブ男には金は借りても素気無い態度・・・酷いよね。笑

そんな貧窮生活の中でも細々と続けていた詩作が徐々につぼみをつけ始め、やがて大輪を咲かせるまでになるのだから、何が才能開花させる糧になるか分からないという意味では、売れない芸術家気取り連中には希望を与えてくれる作品なのかもしれない。^^;

嫌々見始めたのに徐々に引き込まれたのは高峰さんの演技の他、やはり成瀬監督の演出に鍵があるのだろうが、悔しいことにそれが何なのか上手く言葉にすることができない。
成瀬作品は数作しか見ておらず、今までは決していい印象はなく、名匠と言われる理由がさっぱり分からなかったけれど、本作にて名匠たる片りんを感じ取ることができたかもしれない。それも大きな収穫でしたね。

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