石口

放浪記の石口のネタバレレビュー・内容・結末

放浪記(1962年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

この地味で辛気臭い話がどうしてここまで面白くなるのかが謎すぎる。とにかく見ていて退屈に感じるところがまったくない。個人的には成瀬のベストの一つ。

貧困に苦しみ、すぐ感情をあらわにして人と衝突し、どんな仕事も長く続かず、吸い寄せられるようにダメ男とばっかりくっついてしまう。私はこういった要領良く生きられないタイプのヒロインにはどうしても肩入れしたくなってしまうほうらしく、またそれを高峰秀子が演じることでとても魅力的なキャラクターになっていると感じたのだ。文字通り高峰に釘付けになってしまう2時間。

とにかく、高峰が感情を爆発させる描写がことごとく素晴らしい。仲谷昇、宝田明という2人のダメ男との修羅場も良いが、女給の仕事をしている時に同僚がセクハラを受けている現場を見て怒り狂う場面もグッときた。また、いい奴すぎる加東大介、胡散臭いけど好人物として描かれる伊藤雄之助など、彼女を取り巻く脇キャラもそれぞれ味がある。

高峰・宝田夫妻の住む家に加東が訪ねてくるシークエンスで、手前と奥に配置された3人をフレームに収めたショットが印象的。ここでの宝田のクズ野郎っぷりにも圧倒される。やっぱり成瀬は凄い!
石口

石口