たく

悪魔の美しさのたくのレビュー・感想・評価

悪魔の美しさ(1950年製作の映画)
3.7
ゲーテの「ファウスト」をベースにした、老科学者と悪魔の契約をめぐるドタバタを描くルネ・クレール監督1950年作品。ジェラール・フィリップがこんなに感情豊かに演技してるのを見るのが初めてで驚いた。老科学者役のミシェル・シモンも達者。すっかり忘れてたけど、彼は「アタラント号」に出演してたんだね。

高名な老科学者のファウストが、若さに対する狂おしいほどの渇望を悪魔のメフィストフェレスに嗅ぎ付けられ、若さを与える代わりに悪魔に魂を売るという契約をそそのかされる。まずはお試しで若返ったファウストが、老ファウストの姿に扮したメフィストフェレスのサポートを受けながら王妃にお近づきになるんだけど、なかなか契約にサインしないファウストを何とかその気にさせようと、彼を幸せの絶頂まで導いたところでいったん現実に引き戻す。また幸せに戻りたかったら契約しろという、まあ汚いやり方なんだけど、人の心に射幸心が芽生える仕組みを絵に描いたような話が面白い。

メフィストフェレスがファウストに彼の未来を見せるシーンで、部屋の鏡の中に未来が展開する演出が秀逸。錬金術で成功したファウストが王妃と結ばれるまでは良いものの、その先にある運命の果てを知ってしまったファウストが運命に抗っていくという、原作とはかなり違う展開になって、たたみかけるような終盤からのまさかのラスト。未来のシーンで現れた立ち昇る煙は実はそういうことだったのかと分かるのが上手くて、やっぱりクレール映画の醍醐味はこういう楽しさだよね。
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