hasse

マダムと泥棒のhasseのネタバレレビュー・内容・結末

マダムと泥棒(1955年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

イギリスのコメディ映画。楽団を装い老婦人宅に居候する強盗団が、現金輸送車から現金の強奪に成功したのも束の間、老婦人にバレて…というストーリー。

強盗団が終始、お人好しでお喋り好きの老婦人のペースに巻き込まれるさまや、男たちが苛つきながらも流石の英国紳士然とした丁寧な応対を見せる様子がユーモラス。

なにより、老婦人にバレてから、坂を転げ落ちるように強盗団が一人また一人と破滅していく手の込んだシークエンスが最高。老婦人をあの手この手で篭絡するも毅然とした態度で突っぱねられたり、仲間内の諍いで命を落としたり、全ての選択が裏目に出て破滅に向かっていく強盗団が、とても笑えてどこか切ない。
ラストのオチ(強盗団が破滅して、善なる心を貫いた老婦人が現金を手に入れる)というのは、落としどころとしては悪くないが驚きはない。

5人の強盗団のキャラ付けも◎。リーダー兼ブレーン、血の気が多い武闘派、木偶の坊、ビビり、目立たないけどこずるいやつ。アレック・ギネスの醜い扮装(出っ歯に殺伐とした頭髪)はなかなか忘れがたい印象を残す。

老婦人のありがた迷惑お節介キャラは、作劇的には相当うまく活きているのだが、個人的にああいうタイプの人間が苦手でイライラ…。正義感や善意に溢れているが、見方を変えれば自分本位で相手の時間を無為に奪う腹立たしいやつ。

原題the ladykillersの意味は色男、女を誘惑する男。強盗団バレしてない頃の彼らは、老婦人に若かりし頃を思い出させうっとりさせることに成功するが、バレてからはいくら誘惑しても悪事に加担しようとはしない。

老婦人が本当に手に入れたいものは、現金ではなく心のくつろげる話し相手だが、事件が終わっても警察は相変わらず彼女の話を取り合わず、自分の話を聞いてくれる人はいない。ラスト、路上で絵を売る男に捨てるように紙幣を恵む彼女の姿もまたどこか切ない。
hasse

hasse