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キートンのカメラマンのokawaraのレビュー・感想・評価

キートンのカメラマン(1928年製作の映画)
4.8
ロー・ウェイと袂を分かち、ゴールデン・ハーベスト下で良作を量産していたジャッキー・チェンが、ついにあらゆる映画を凌駕する傑作『ミラクル/奇蹟』を生みだすことで知られる1989年。そのかけがえのない年から遡ること幾星霜、ジャッキーが愛してやまないキートンが、ひそかにその奇蹟を予告していたことを祝福したい。
カメラマン・キートンによって後ろ向きに被られるハンチングへの執着は、新米ギャング・ジャッキーによってトップハットに持ち替えられるハンチングであり、すなわち帽子をめぐる心弾むアクション(そのために膨大なテイクを重ねた執着を思い出したい)は、キートンからジャッキーへハンチングが手渡された紛れもない事実を示す感動的な光景にほかならない。

ところで『ポリス・ストーリー』でのバスをめぐるアクションは、『カメラマン』の誕生を待たずしても、そもそもキートンがいなければ生まれえなかったことは改めていうまでもないが、『カメラマン』でのキートンとサルの協調を目にして、『ファイナル・プロジェクト』におけるジャッキーとコアラの戯れを思い出さずにはおかない。そしてその歪な邦題で知られる作品の原題が『警察故事4』であり、ジャッキーの代表連作「ポリス・ストーリー」の一部を形成する傑作であることも念のため付言しておきたい。
フランク・キャプラの映画をリメイクすることで、アクションからのある種の脱却を志向した『ミラクル/奇蹟』は、そうした代表連作を差しおいてジャッキー自らが認める自身の集大成的作品であることは特筆すべきことであり、キートンがアクションを封じた(「封じられた」という認識が正しいなどといった史実はこの際どうでもよい)『カメラマン』が、その奇蹟の到来をハンチングへの執着によってあらかじめ告げていた事実に、心の底から感動した。
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